未来編 リアべスペシャル号
未来達は『やらされて』畑仕事をしているわけじゃない。<勉強>と同じように<遊びの一種>としてやってるだけだ。だからケインが参加していなくてもさほど気にしていない。
精々、蒼穹が、
「ケインも一緒にやったらいいのに」
と口にするくらいだ。しかしそれ自体、『なんとなくそう考えている』程度のものだった。本気でそう考えていて、そしてその通りにしてくれないケインに苛立つということもない。
『自分以外の誰かが自分の思っている通りにしてくれるのが当たり前』
という感覚自体がないんだ。そんなものは<思い上がり>以外の何ものでもないわけで。
<灯と久利生の娘>である蒼穹は、陽気で活発でともすればついつい『やらかしがち』にもなる母親の灯とは違ってそこまで積極的に前に前にと出てくるタイプじゃなかった。直感重視で、
『思ったことを考えなしに口にする』
とさえ他人からは見られそうな部分があまりないんだ。だからどちらかと言えば父親である久利生に似たのかもしれない。と言うか、
『蒼穹が元々備えていた資質だと久利生の振る舞いの方がしっくりくる』
感じなのかもしれないな。だから必ずしも子供はそのまま親のコピーになってしまうわけじゃないというのも事実なんだろう。俺もそこを否定したいわけじゃない。しかしそれは<親の影響>そのものを否定するものでもないのも事実のはずなんだ。
実際、アクシーズとしての資質を強く引いている蒼穹は、
『空を飛ぶ』
ことに対する<本能的な欲求>とも言うべきものが備わっているようだった。赤ん坊の時からすでに灯が<ミレニアムファルコン号>で空を飛ぼうとすると一緒に飛ぶことを望んだりもしていたし。灯が一人でミレニアムファルコン号で飛び立とうとすると、
「あーっ! あーっ!」
と声を上げて手を伸ばして全力でアピールしたりしたんだ。そして灯が蒼穹を体に括り付けて空を飛ぶとすごく気持ちよさそうにしていたと。
だから蒼穹にも専用の<ウルトラライトプレーン>を用意してある。
灯の<ミレニアムファルコン号>が映画に出てきた宇宙船の名前を拝借したものというのもあって、
<リアべスペシャル号>
と命名した。<リアベ>という言葉自体がある植民惑星では<空>を意味する単語として使われているというのも決定打になった。そもそもはあくまで映画の中で使われていた宇宙船の名称だったらしいが、それが何らかの理由で転用されて定着したものらしい。
そういう言葉は他にも数え切れないほどある。




