未来編 ただの八つ当たりなら
『いつまで経っても『毒親が!』『クソ親が!』とか言って親の所為にしてるとか、そんなだからクズのままなんだろ!』
親にまともに躾けられた人間ならこんなこと口にできるはずがないのにな。
俺はそう感じる。俺がそんなことを口走っていたら俺の両親が悲しむのが分かるし。
だからといって俺はあの人達に『厳しく躾けられた』わけじゃない。怒鳴られたり叩かれたりしたわけじゃない。『一度も叩かれた経験がない』わけじゃないが、それは結局のところたまたま親の虫の居所が悪かった時に俺がやらかしたからだったし。しかもそのことについて謝ってもくれたよ。あの人達は『虫の居所が悪かったからついキレてしまった』のを<躾>だと言って正当化しないでいてくれたんだ。
まあそれでも『自分の虫の居所が悪かったからって叩くとか』と感じて不満は感じてしまったが。そういうのが積み重なって反発してしまったわけだな。
けれど俺自身が成長したことで、
『まあ親だって人間なんだからそういうこともあるよな』
と思えるようになっていったんだ。しかしそれも要するに、
『あの人達が先に俺の人間と認めてくれていたのが実感としてあったから腑に落ちた』
というのは確かにある。それがなかったら今でも反発したままだったかもしれない。
『成長することで親の気持ちが分かる』
それさえ結局は土台となる部分があってのことなんだと感じるんだ。それがなければ理解なんてできないだろう。『親の気持ちが理解できる』のはあくまで、
『それができる土台を親が作ってくれた』
だけでしかない。俺自身が親になればこそその実感しかない。だったら俺は親としてその実感に従うまでだよ。
『他所様のお子さんを罵る』
なんてことに血道を上げるつもりは毛頭ない。そんなことをすればあの人達を貶めるだけだ。それが分かるからこそ俺は自分を律することができる。律することができなかったのは光莉のことがあったあの時期だけだ。
それを理解してるからこそ<他所様を罵る輩>についても頭ごなしに否定する気にはなれないというのはある。どんな事情があるのか背景があるのか俺には分からないからな。AIやロボットの制止を振り切ってまでそこまでする以上は<それをせずにいられない事情>があるんだろう。<ただの八つ当たり>なら身近なロボットが受け止めてくれるだろうし。
もっとも、かつての俺のように敢えてロボットを遠ざけて頼ろうとしない人間もいるかもしれないが。




