子供達はもう(すっかり一人前)
『私達のことを最後までちゃんと見届けて。それがお父さんの役目だと思う』
なんて釘を刺されても、そうやって正直な気持ちを言ってもらえて、逆に光のことが一層身近に感じられて俺は単純に嬉しい。
時分が<父親>になったことでものすごく実感した。
子供が素直な気持ちを話してくれるっていうのは、それを打ち明けてもいい相手、打ち明けたい相手ってことだってのを。
で、思ったんだ。そこで親が真剣に耳を傾けなかったら、親の方がむしろ子供に見限られるんじゃないかな。とも。
『こんな親に何を言っても無駄だ』
って感じでさ。
そんなことしてたら話し合いだってできないだろうな。子供が親の言うことを聞かないんじゃなくて、そもそも親が子供の話を聞いてないってことな気がする。
だったら俺は親として、子供達の話には耳を傾けなきゃな。
……話し掛けてくれるのは今のところ光だけだが。
ただ、他の子供達も、俺で遊ぶのを受け入れてたからか、ちゃんと俺のことも嫌わないでいてくれてるんだよな。
だから余計に、『子供ってこんなに可愛いんだ』って思える気がする。
そうだ。自分が受け入れてもないのに勝手に相手が好きになってくれるなんてそんなムシのいい話は、フィクションの中くらいしかない。相手に受け入れてもらうにはまず自分が受け入れなきゃな。
とか、こういうのは割と早々に納得できたんだが、やっぱり自然との折り合い方とという話になると、人間の在り方自体がそもそも不自然だから無理が出てくるんだよなあ。
まあそれでも、焔達のことももう大丈夫そうだ。光の言うとおり、最後まで見届けてやるさ。
なんてことがあってからさらに歳月が過ぎ、子供達はもうすっかり一人前になった。そして、彗を最後に、俺の子供は生まれてない。
「お父さん、今日はW117地区の調査に行ってくるね」
そう言って俺に声をかけてきたのは、作業服に身を包みそこに自動小銃をたすき掛けにして脇には大型ナイフを下げ、赤みの強いブラウンのストレートヘアを胸まで伸ばし、パッと見は感情を読ませない真っ直ぐな視線が印象的な、クール系の大人の女性になった光だった。
その隣には、さすがに少しも変わってないイレーネの姿もあった。片時も離れず光につき従ってる。
するとその時、
「お姉ちゃん、私も行きたい!」
と、俺の後ろから慌てて駆け寄ってきたのは、中学生か高校生くらいって感じになった灯だった。タカ人間としてはもう立派に<成体>のはずだが、種族的に小柄なこともあって幼く見えるな。
顔立ちは光にもよく似てて、でもやっぱり母親である鷹の面差しも感じ取れる、やや釣り目でボーイッシュな感じの気の強そうな短髪(色は濃茶)の女の子だった。
光と一緒に、調査に行きたいと言ってるんだ。
そんな灯をじっと見詰めて、それから光はふい、と背中を向けつつ言ったのだった。
「四十秒で支度しなさい。それ以上は待たないからね」




