未来編 身勝手な理由で虐げるとか
しかしその一方で『報酬がもらえる』ことは人間が仕事を続ける上でのモチベーションに大きく関わってくるから金銭ももちろん不可欠ではある。
それもあって<金>そのものはなくなっていない。俺もそこまではなくす必要もないと思ってる。
『社会も一個の生物である』
と見做すなら<金>は<ビタミン>や<ミネラル>みたいなものと考えることができるのかもしれない。それによって代謝が円滑に行われたり調子を整えたりするという感じの。
しかしだからこそ、
『金が極端に一部に集中する』
のは『好ましい状態とは言えない』のかもしれないな。別に無理なくたまたまそこに集中するだけならそんなに目くじらを立てる必要もないとしても強引だったり脱法行為だったりでかき集めるのは<不調をきたす原因>になるんだろう。ここに社会が出来上がっていく上でもその辺りは気を付けなきゃいけないと思う。
そういえば以前にも触れた、天才科学者、
<アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士>
についても、その研究が基になった様々な発明品のパテントにより膨大過ぎる富を得て逆にその管理に途轍もないコストがかかるようになったってことだったなあ。
『過ぎたるは及ばざるが如し』
とはよく言ったものだと思う。まあ当のメルシュ博士自身は財産そのものには興味がなかったらしく管理は人任せで財産が散逸していくことにもまったく関心を示さなかったらしいが。博士はただただ自身の関心に従って好きなことを研究していられればよかったらしい。
その辺りはルイーゼと似たタイプということかもしれない。ルイーゼのことを知ればこそメルシュ博士の人となりについてもなんとなく想像がつく気がするか。それがどこまで正確かは確かめようもないものの別に確かめる必要もないしまあどうでもいいさ。とにかくそういう<特異な人間>が実在するのを承知しているのが必要だというだけで。
俺はそう思うからこそ未来達のこともただそのままで受け止めようと思うんだ。他人に危害を加えようとしない限りは。
その点、ケインはそれこそ『他者を害する』というのが本質的にできないタイプだと思う。本当に自身の命に危険が及べばどうかは分からないにしても基本的にはそんなことを望んではいないのが分かる。
確かに野生の生き物としては普通じゃないかもしれないが、だからといってそんな彼を『気に入らないから』『弱いから』なんて身勝手な理由で虐げるとか筋が通ると思うか? 俺は自分の子供がそんな理由で誰かを虐げようとしていたら許さないよ。




