楽しいのは事実だよ(いろいろあっても)
新暦〇〇一一年十二月四日。
人間って、どうしても自分の見たいものしか見ない傾向があるからな。毎日顔を合わせてるように思えて実は子供の顔や様子をちゃんと見てないっていうのはあると思う。
子供が<良い子>のふりをしてるとついついそこだけを見てしまうって感じで、そうじゃない時の表情や様子については見ないフリっていうことがあると、講習では、重要な注意事項として言われるそうだ。
そういうのも分かる気がする。
何か犯罪が起こる度に、『まさかあの人が?』とか、『良い子だったのに』とかって話が聞かれるが、いやいやそれって、そういう<良い子の仮面>の部分を見ただけで安心しきって、実はちらちら覗くヤバい部分については見て見ぬフリしてただけじゃね?とは、正直思ってたよ。
その点、メイトギアはロボットだから見て見ぬフリってのができなくて、<良い子の裏の顔>ってのが覗くと、それについて対処しようとしたりするんだよな。子供の相談に乗ってくれたりとか、公的に配置されてるカウンセラーとかと連絡を取り合って必要な手立てをとろうとしたりとか。
けど、それらも、親が『余計なことをするな』と言えばできなくなるし、そうなると後はもう、実際に事件が起こった際に身をもって盾になるくらいしか。
で、メイトギアが身を呈して防いでくれて人的被害が出なかったとしても、そこに犯罪行為があれば逮捕されるし裁かれるしニュースにもなるしで、『まさかあの人が?』『良い子だったのに』というコメントが聞かれるというな。
司法もマスコミも存在しないここじゃ事件が起こったって逮捕もされないしニュースにもならないが、そういうのは抜きにしても子供のことを見てるだけでも面白いとは思うようになったな。
昔は、子供なんてどう接していいのか分からなくて苦手だったりもしたんだが。
可愛いとは思ってたよ。『子供なんて可愛くない』とまでは思ってなかったし、無下に扱う気もなかったが、だからって具体的にどうすればいいのかってのがさっぱりで。
その点、ここでは他に娯楽の類もないってことで、結果として子供達に注目することになって、よく見るようになったっていう、<怪我の功名>的な結果ではあるけどな。
ああでも、うん。悪くない。光、可愛いよ光。
なんて、父親としての喜びに浸ってる俺の隣で、焔と彩がイチャイチャと。
う~ん。お父さんは複雑です。
ただ、楽しいのは事実。いろいろあっても、そういうのも含めて楽しい。毎日が充実してる。
さて、子供達の可愛さも再認識したことだし、生きる気力が湧いてくるってもんだな。




