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未来編 野生を否定することで

ケインは確かにイザベラやキャサリンだけじゃなく土竜(モグラ)にさえ怯えて、


「キャーッ!」


と悲鳴を上げてしまうような<弱虫>だ。アラニーズとしてはおそらく猪竜(シシ)さえ退けられる程度の基礎的な力は有しているはずだが、実際に身体能力を個別に確認すればそれだけのポテンシャルを秘めているはずだが、活かすことは難しいだろう。


しかしそれがなんだと言うのか。彼は確かに<ビアンカの子>だ。そして<人間>である。<朋群(ほうむ)人>である。その彼が生きていけないような社会を俺は望んでいない。そんな社会なら作る意味がない。地球人と違って朋群(ほうむ)人はまだ十分に野生で生きていける、野生に戻ることができる、高いポテンシャルを残してるんだ。無理して社会なんか作る必要はないだろう。ただ野生の獣として生きていけばいい。


だが俺達は<人間>として生きることを望んだ。野生で生きるよりも人間として生きることを望んでいるんだ。だったら<弱虫><軟弱>なんて理由で誰かを排除しようなんて筋が通らないだろう? 『野生を否定することで人間として生きる』ことを選択したんだから。


そうだ。ビアンカが、


<例の不定形生物由来のキマイラゆえに持っていた自家生殖能力>


によってケイン達を宿した時、本来なら<卵胎生>としてビアンカの胎内で孵化してから生まれるはずだったのを卵の状態で摘出し<人工孵化>という形で誕生させたんだ。野生のヒト蜘蛛(アラクネ)とほぼ同じ身体機能を持つアラニーズの場合、母親の胎内で孵化した子供達はそこで<共食い>を始める可能性が高いと判断して敢えて<自然に反した方法>を取った。もうこの時点で野生を自然を否定したんだ。それを今さら『野生のままに』『自然のままに』と言うのか? あまりにも滑稽すぎて『臍が茶を沸かす』というヤツだな。


ならば自身の選択に責任を負うのが当然だろう? 


<自分の仲間の子供達が共食いという形で殺し合うのを放っておけないという感情>


を無理に押し殺すのは人間として自然な姿と言えるか? ましてや<それを回避する手段と方法>があるにも拘わらず『野生の場合はそれが当然だから』で納得できるのか? 少なくとも俺達は納得できなかった。自身の感情に従ってケインを救った。だから彼は今、ここにいる。


それにいまだに服を着ようとしないイザベラやキャサリンと違ってケインは割と早い段階で服を着てくれたんだよな。


『その方が好ましい』


というのを自分なりに理解してくれたようなんだ。実に『人間らしい』だろう?



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