未来編 AIでは代用できない領域に
<自分の最奥から込み上げてくる感情>
ああそうだ。AIとAIが制御するロボットにはそれがない。自分の最も深いところからマグマのように込み上げてくるそれがないんだ。どんなに表向きを取り繕うとも抑えきれずに吹き上がってしまう激しい<気持ち>がないんだよ。
人間は<心の生き物>だ。だからこそ<激しい心の動き>に揺さぶられてしまう。本気で競技に臨んでいるアスリートにはそれがある。フィギュアスケートのキスアンドクライでは慟哭のあまり立ち上がれなくなる選手もいると聞く。
AIがどれほど<人間の感情>を再現しようとしても、その昂りを再現はできても、そもそもそこに至る<背景>がないんだ。努力もしないし心も持たないがゆえに。人間の手による創作の場合は作り手側の気持ちがそこで爆発している場合もある。それこそ命を削って作り上げたものだったりもする。
もちろんすべての創作物がそうなわけじゃないだろう。作り手側は本気だったとしても『命を削って』までのレベルとなればきっと数は限られてくる。そこまでいけばAIでは再現できないにせよ、言い方は悪いが『凡百な』作品であればAIが凌ぐこともできてしまうのもまた事実。それこそ<小手先のテクニック>に頼ったようなものであれば。<テクニック>はまさしくAIの得意とするところだし。
しかし<超一流>ともなれば話は違う。AIでは代用できない領域に達したものが残るというわけだな。
まあ逆に<あくまで趣味の範囲に徹したもの>も生き残ったが。あと<別の付加価値を目指したもの>もか。
<芸能人を集めた競技大会>
なんかがまさしくそれだ。<アスリートが本気で挑むものとは別方向のパフォーマンス>を楽しむいわば<余興>だからな。
そういえば芸能人なんかも<見た目だけしか売りのない者>は生き残れなくなったとか。
それはそうか。見た目は『いくらでも作れる』メイトギアがいればどうにでもなるわけで。歌も芝居もダンスも文句なく一流だし。見た目だけのタレントを無理に使う理由もない。そもそも生身の人間を使うのは<スキャンダルのリスク>が常につきまとうもんな。もっとも実際には、
<ニュースを読むだけのキャスター>
が真っ先にほとんどメイトギアに置き換わったそうだ。キャラクター的に代わりのいないキャスターは残ったものの、それ以外については『ただニュースを読んでいればいいだけ』にも拘らずスキャンダルが起こればダメージも非常に大きいと考えれば納得だ。




