未来編 原因を作らない
本来なら残しておくはずの芽を摘んでしまったイザベラに対して未来は『こらこら』とたしなめながらもキレた様子までは見せなかった。彼女が悪意でそうしてるんじゃなく単純にまだよく分かっていないからこそそうしてしまったんだと理解してるからだな。
地球人社会で『ある年齢以下の子供がやらかしてしまったことに対して罪を問わない』というのは、そもそも子供が自身の行為についてよく理解していない可能性が高いからだという前提がある。確かに俺自身もこうして子供達を見ていたら、
『よく分かっていないからこそ悪意なくやらかしたりする』
というのが実感として腑に落ちたよ。確かに子供でも<悪意>に基づいて不法行為をすることもあるだろう。<イジメ>なんかはその典型だと思う。だがその場合はまず、
『なぜそんな悪意に基づいた行為に出るなどという発想を持つに至ったか?』
を考えなきゃいけないんじゃないのか? <そうなるに至った原因>を突き止めることなくただ対処療法的に罰を与えているだけじゃ根本的な解決にはならないはずだ。現在の地球人社会ではすっかり遠い過去のものになってしまったが、かつては<生活習慣病>とかいうのが蔓延していたらしいな。医療技術がもはや魔法レベルで進化した今でも生活習慣病に確実に対処するには結局のところ、
『生活習慣そのものを改める他にない』
というのが現実だ。病変そのものは医学的に対処できてもイタチごっこになるわけで。<公的保険>も当人に原因を改める意思がないと判断されると保険適用率が下げられていくんだよな。まあそこまでの事例は滅多になかったそうだが。なにしろメイトギアが物心両面でサポートしてくれるし。食事なんかについても『我慢を強いる』という形じゃなく、
『食べて満足感を得られつつ栄養学的に生活習慣病を予防できる』
ものを提供してくれるんだ。<当人の好み>もしっかりと把握して。
そこまでいっても結局は『原因に対処する』ことでしか根本的に解決はできないんだよ。<糖尿病>と言われる、
<一度発症したら根治は望めず悪化を抑えることしかできない病>
についても根治できるようになっても『何度も発症を繰り返す』のは『原因が排除されていない』からで。さすがにそういう振る舞いについてまで無限に無制限にケアしてもらえるわけじゃない。『見捨てられる』ことはないもののそれなりのペナルティは科せられるんだ。
ここじゃまだそういうペナルティ制度そのものがないが、だからこそ『原因を作らない』ことが大事だと思う。




