未来編 勉強の一環
そんなこんなで<ルコアによる授業>は地球人社会における<学校での座学>とは本質的にニュアンスの異なるものではある。もっとも、ルコア自身が例の不定形生物内に再現された<データ世界>において受けていた<学習>についても科学文明がほとんど存在しない環境下において生き延びる戦略としての知識を得る形のものであったから地球人社会における<学校の勉強>とはやっぱり違ってたそうなんだ。だからむしろ今のやり方の方がルコアにとっては<勉強>なんだよな。おかげで違和感なく教師役を務めることができているというのもある。
しかし未来達の集中力が続かないため、まず最初は一時間、十分から十五分の休憩を挟んで次は三十分。再び休憩を挟んで次も三十分の計二時間というスケジュールだ。
しかも厳密に決められた時間じゃなく未来達のその時の集中度合いを見て変動するフレキシブルなものだな。
まあ固定された時間でスケジュールを組むのは結局のところ大人の側の都合でしかない。『その方が管理が楽』というだけの話だし。しかしここでは現時点では未来達しかいないからそれこそ『弟妹の勉強を見てあげている』程度のものなので自由が効くんだよ。家で勉強している時にそんなにきっちり時間を区切ってやらないだろう? 単純にそういうことだ。
未来達がちゃんと理解できるまで何度でも教えるからほとんど進まない日もあるものの、それでいい。『理解してもらう』のが大事であって『カリキュラムをこなす』のが目的じゃないしな。
そうして<座学>を終えると今度は<実地演習>だ。これも、
<この世界で生きていくのに必要な知識>
だから<勉強の一環>と言ってもいいかもしれない。要するに、
『畑に出て実際に畑仕事を手伝う』
だけだが。しかし未来も黎明も蒼穹もこっちの方が楽しそうではある。イザベラだけは、
「カリデ、エモノ、ツカマエタホウガ、ラクジャン」
と、あまりお気に召さない様子ではあるものの、未来が、
「そうか? 俺は割と好きだけどな」
と言って積極的にやろうとするからか、
「ム~」
不満そうに口を尖らせながらも一緒に作業をしてくれる。今日は<間引き>だ。出てきた野菜の芽の中で育ちが悪いものを間引いて残った芽の成長を促すあれだな。
するとイザベラが適当に芽を摘まんで放り投げだしたから、
「こらこら、ちゃんと育ってる芽まで摘むな。それじゃ意味ないだろ」
未来がたしなめる。しかしその口調はさほど強くない。『怒ってる』わけじゃないからだろう。




