未来編 たったそれだけのことで
『学校で学んだ知識を他者を攻撃するために使う』
なんてのは<学校に通わせてくれた親>に対して申し訳ないと思わないのか? そういう奴の親はそんなことをさせるために自分の子供を学校に通わせたのか? 俺の子供達は<学校>には通ってないが、光も灯もそして錬慈もエレクシアやセシリアが座学を担当してくれたが、他者を攻撃させるためにそんなことをしてもらったわけじゃない。子供達がもしそういう振る舞いをしていたなら俺は黙っていない。
まあここにはそもそもそんなことをする相手もいないが。そしてそんなことをしてくる相手もいない。
単純な話だ。相手を<自分とは違う人間>だと認めれば自分にとって常に都合よくいてくれるはずがないことが分かる。それが分かれば自分にとって都合よくいてくれることを期待する必要もない。ただただ相手を一人の人間だと認めればいい。たったそれだけのことでお互いに攻撃し合う必要がなくなる。『競う』ことはあっても『攻撃する』必要はない。リソースが不足し自分が生きるためには奪うしかなかった世界とは違うんだ。相手も自分も生きてそれぞれに幸せを掴むこともできる社会になったんだ。地球人社会もそうだしここも全員が生きて幸せを掴むことができる社会なんだ。『何を幸せだと思うか?』という部分はあっても互いの幸せを否定する必要もない。
確かに同じ人を好きになった時には全員が一人をシェアすることはできないだろうさ。久利生をシェアした灯とビアンカと來や、陽をシェアした和と麗のような選択を誰もができるわけじゃない。
だが、相手を一人の人間と認めるならその人の選択も認められなきゃおかしいはずなんだ。『相手を人間として認める』というのはそういうことなんだよ。そこで自分を選んでもらえなかった場合につらいのは確かでも、その人が自ら決めたことであれば受け止めなけりゃ『一人の人間と認める』ことにはならない。
<選ばれた理由><選ばれなかった理由>は気になるとしても、それを否定するのはその人の人格そのものを否定するのと同じ。そこを認められないのなら『内面もその程度』ということになるし。
その点で言えば、全員の合意さえあれば<シェア>という形もとれるここは<選ばれる可能性のある者>にとっては優位な世界でもあるのか。その分、<誰にも選ばれない者>にとっては非常に残酷な世界でもある。
でもまあ、自分の感情にばかり正直で気に入らないとなれば攻撃的に振る舞うような奴が選ばれなくてもむしろ当然だな。




