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未確認生物(まあ、大体が未確認だが)

雨除けに設置してもらったパラソルも気に入ったのか、鳥少女は毛繕いを終えた後もそこにしゃがみ込んで雨宿りをしていた。


落ち着いた様子が窺えて、特に問題はなさそうだ。


(ひそか)も食事を終えて、俺は再びローバーを河に下ろした。時速十キロ程度のゆっくりした速度で遡上を続ける。


ドローンカメラに捉えられた鳥少女の様子も変わらない。周囲を窺うようにキョロキョロと頭を動かすが、さほど緊張している気配もなかった。


だがその時、エレクシアがまた声を上げる。


「前方に未確認の移動体を捉えました。距離は約三キロ。全高二メートル余り。全長約四メートル。詳細は不明ですが動物だと思われます。河の浅瀬を歩いて移動中です」


そう言われてピンときた。さてはそれが、鳥少女がこのローバーを気に入った理由だなと。


急ぐことなく速度はそのままで遡上を続け、十数分で、俺の目にも河の端を歩いている大きな動物の姿が見えた。なるほどローバーに似てるようにも見えなくもない。


それは、ゾウのような印象のある動物だった。動きや遠目での質感が似てるんだ。さすがに人間型の動物じゃない。俺の目からは体毛が生えてるようには見えなかったが、エレクシアに確認すると短くて太い毛がまばらに生えているのが分かると言う。


って、まるっきりゾウじゃねーか。


が、更に近付くとゾウじゃないことが分かった。こちらに向けた頭が、トリケラトプスとかの角竜に似ている気がする。ただし、トリケラトプスの特徴の一つであるエリマキのようなフリルが見られないから一見しただけの印象はかなり違うが。むしろ、鼻の上の辺りが角のように尖っているから、ゾウぐらいの大きさのサイといった感じにも見える。


こちらの方に意識を向けてる気配が伝わってくるが、特に攻撃をしてくるような気配も見られない。なのでエレクシアに記録してもらいながらこのまま脇を通り抜けようとしたその時、何かの影がその動物に向かって飛んでいくのが見えた。あの鳥少女だ。羽を広げて滑空して、ゾウだかサイだかという生き物の背中に飛び乗った。だが、何度かそこで羽ばたくような動きを見せたと思ったら伸びあがるように高く跳ね、翼を広げて再びこちらに戻ってきて屋根の上に下りる気配があった。


本来はあの動物の背中に乗って川を渡ったり休んだりしてたんだろうが、どうやらローバーの方が気に入ってしまったようだ。まあ、仕方ないか。あっちには雨除けもないし、しっかりと掴まれるようなルーフキャリアもないしな。


ドローンカメラで確認しても、やはりパラソルの下で雨宿りをしながら体についた水滴を舐め取っているような仕草を見せていた。


滑空の様子を見ていると、雨の日などには河を渡り切るのはギリギリといった感じのようだ。


「羽は油分が多いらしく水を弾いてはいましたが、水滴が乗るだけでも影響が出ますからね。河を渡るときは無理せずあの生物の背中に乗って渡っていたものと思われます。また、ある程度の距離を移動する時にも乗っているのではないでしょうか」


なるほどその程度の知能はある訳か。


その後、さらに同じ動物の別の個体の姿も確認できた。割と近いところにいたので、もしかしたら群れで行動するのかもしれないな。だとしたらやはり生態的にはゾウに近いのかもな。ということで、サイにもゾウにも似てるということでその動物のことを<サイゾウ>と呼称することにした。


基本的には大人しい生き物のようだ。ただし、あまり近付くとひょっとしたら攻撃してきたりするかもしれないが。なので下手に近付かないようにはする。と、河を渡るところに出くわした。しかも、ローバーの屋根に乗っているのと別個体の鳥少女の姿まで。やはり河を渡るサイゾウの背中に乗って移動するのが確認できた。さらには河岸に近付いたところで林に向かって飛んで姿が見えなくなる。


ちょうど確認できて良かったな。


なるべく距離を保つ為にサイゾウが横切るのを待ってから再び遡上する。今日はこのまま日が暮れるまで河を遡ってキャンプの予定だ。ここまでで既に五十キロほどを上ってきた。なのに河の様子も密林の様子も変わらない。やはりかなり広大な密林のようだ。地球で言えばアマゾンといったところか。


日が傾き空が赤くなり始める。この惑星の一日は約二十五時間だ。地球よりは一時間ほど長いがそれほど大きな違いでもない。さらにエレクシアの計算によれば公転周期は七二〇日ほどだという。地球の二年でこの惑星ではやっと一年といったところか。そして今いるこの場所は、太陽の軌道から見て北緯約十度くらいらしい。割と赤道に近いようだが気候としては温帯っぽいな。気温が低いのは標高が高い可能性がある。平野にも思えるがかなり広大な台地なのかもしれない。それでこの植生なのだから、やはり植物の側の性質によるものか。ただ、思ったよりは夜も気温は下がらない。


現状で分かっているのはそんな感じか。


取り敢えず、ここまでのところは順調と言ってもいいだろうな。



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