未来編 教え育む
<他人が自分の好ましい部分を見出してくれるはずだという甘い考え>
というのは本当にありとあらゆる場面で見られる<人間(地球人)の悪癖の一つ>だよな。
恋愛とかでも仕事とかでもそういう考えで他人に一方的に期待してる人間が多くないか? <ストーカー>とか<パワハラ上司>なんてのはまさしくそれじゃないか?
自らの<好ましくない行為>については棚に上げて<相手への好意>とか<相手のためを思ってやってること>という<自分が思う好ましい部分>こそをちゃんと認めてもらえるべきだと考えてるとか。
だが俺はそんなムシのいい話は人間関係においてほぼ存在しないと思ってる。ごくまれにたまたま都合よく事が運んだ事例を殊更に取り上げて『こうあるべき』とか考えるから結局は上手くいかない。そして上手くいかないのを自分以外の誰かの所為にする。
それじゃ駄目なんだ。だからこそルコアは子供達の前でキレることをしないように心掛けてるし、キレずにいられるだけの精神的余裕が今はある。どんなに綺麗事を並べても当人に余裕がなければキレずにはいられなかったりもするよな。となればルコア自身がキレずにいられるようにするのが大事だ。その点、ビアンカと久利生と灯は本当によくやってくれたよ。それを今、ルコアは未来達に対してやって見せてるんだ。自分がしてもらったことを。
<教育>ってのはそういうことじゃないのか? ただ知識を詰め込めばいいというわけじゃない。<知識>なるものは『どう使うか?』が大事だと俺は感じるんだよ。シモーヌや久利生やシオやレックスやルイーゼを見ていればこそ。
そして知識をどう使うかを教えるのが教育なんじゃないかと思うんだよ。『教え育む』と書くぐらいだし。
「ルコアはホントお兄ちゃんに甘いんだから。こんなの無視しときゃいいのに」
黎明がそう<憎まれ口>を叩くが、これは結局、彼女が見た<コンテンツ>の真似でしかないのをルコアも承知していた。しかもルコアに構ってもらえてる未来のことが羨ましくて少し意地悪をしたい気分になっているだけなんだということも。
そんな黎明には、
「でも私は黎明に対しても厳しくした覚えはないけどな」
悪戯っぽく微笑みかける。なんとも穏やかで見惚れてしまいそうな笑顔だった。瞬間、黎明の顔がかあっと赤くなり、
「あ、えーと……うう……」
しどろもどろに。<ちょっと悪ぶってみたくなってるだけの子供の姿>がそこにあった。
そうだ。本気で悪態を吐かなきゃいけない理由がないんだよな。




