未来編 文字を書く
そうして未来と黎明とイザベラが席に着いたところに、
「おはよう」
挨拶しながら蒼穹が現れた。満年齢で八歳になった蒼穹も一見するとすっかり成人のようにも思える。しかし表情は明らかにあどけない印象で、知らない人間が見たら外見とのギャップに戸惑うかもしれない。
だがここではそれがむしろ普通だからそれを気にする者はいない。外見上がどうかよりも実際の振る舞いで判断する感じだな。
地球人社会でも老化抑制処置によって外見では年齢が推測できなくなったから、あくまで当人の振る舞いで判断するようになってるしな。だから俺達としても受け入れやすかったのはあるかもしれない。
その点で見れば蒼穹はやっぱり<子供>だった。小学生の子供が学校の席に着くような仕草で未来の斜め向かいに座る。ルコアを挟んでその両隣に未来と黎明が座り、未来の正面にイザベラが座り、その隣に蒼穹が座った形だ。さっそくタブレットをいじるその仕草も子供そのものでむしろ微笑ましいな。
その光景は、モニカの家で諸々の作業をしているモニカのカメラを通して俺も確認できているんだよ。
ルコアが未来達の相手で忙しいから家事の多くはモニカが担当してくれている。ルコアの方もそのおかげで余裕が持ててる状態だな。
未来も黎明も蒼穹もルコアを慕ってくれるからなんとなく勉強の真似事を始めて三人が気に入ってくれたから本格的にルコアが教師役を務めて<授業>という形になったんだ。で、他のことをする時間が圧迫されたからモニカに負担してもらうようになった。元から<遊び>として始まったことなんだ。その遊びをちょっと本格的にやってもらってるだけでしかないが、遊びも本腰を入れてやろうとすればそれなりに手間も時間も食う。ならロボットがフォローするのが当然だ。
なお、勉強の内容の話をすると、<言語>は文字がメインになる。<喋る>のはそれこそビアンカや久利生や灯やルコアの真似をしていれば十分に身につくわけで。しかもビアンカ達は誰かを貶めるようなことは口にしないからその点でも問題ない。だが『文字を書く』のは、親が文字を書いてるところを見るのも思ったほど多くないからな? 喋るのに比べれば、と言うか比べるのも馬鹿馬鹿しいほど親が文字を書いてるところを見る機会なんてそれほどないだろ。
一応、ビアンカも久利生も灯も子供達が小さかった頃、目の前で文字を書いてみせて教えてくれたりはしたんだが、それも結局は日常的によく使う言葉の範囲にとどまるわけで。




