未来編 認識することが難しい
とにかく、未来や黎明は屈託なく素直にルコアへの気持ちを表に出すが、ルコアの方はそこまでおおらかではいられなかった。オリジナルのルコアと同じく地球人としてのメンタリティを持つがゆえに、実年齢ではまだまだ<子供>と言っても差し支えない未来や黎明を<パートナー>として認識することが難しいからだろう。
二人のことは『愛して』いる。家族として大切には思ってるし、その人格を受け入れて受け止めて認めてはいる。だから『パートナーになってほしい』と迫られてもそれを強く否定したりはしないし嫌悪したりもしない。だが、実際にパートナーとして認識できるかどうかはまた別の話だ。
陽や和や麗の場合、幼い頃から姉弟のように育ちながらも相手をパートナーと認識することができた。これはたぶん<地球人>のように<価値観>や<常識>による<自縄自縛>に陥ることがないからだろう。
『好きと思えた相手のことは好き』
『一緒にいたいと思えた相手とは一緒にいたい』
という気持ちに正直になれるから、その気持ちにあれこれ理屈をつけて解析しようとしないから、ただただそれに従えばいいだけなんだろうな。
対してルコアは、育ったのは地球人社会じゃなかったが、例の不定形生物の中に再現された<データ世界>だったが、そこで共に暮らしていたのは<地球人>である両親やその仲間達だった。だから意図的に地球人としての価値観を植え付けようとしなくてもメンタリティを作ろうとしなくても自然とそれを獲得してしまったんだろうさ。
ゆえに、
『弟妹のように思って世話してきた相手に、しかもまだ十歳前後の子供に、そういう気持ちにはなれない』
だけなんだと思うし、本人もそう自覚してるようだ。
一方で未来や黎明が自分とは異なる価値観やメンタリティを備えている事実も理解しているから『気持ち悪い』とも思わないし嫌悪もしない。する必要がない。
だからこうして共に暮らすことができているわけだな。そうじゃなきゃビクキアテグ村を出て別の集落で暮らすことだってできる。ホビットMk-Ⅱが管理してる<ダミーの集落>はいくつもあるから、今すぐそちらに移って生活を始めることもできてしまうんだよ。
でも、そうしない。そこまでする必要を感じていない。
ただ、将来的にもそうかと言われると分からないけどな。今は大丈夫でもいずれ負担に感じるようになってくることも有り得ないとは言えないし。
灯もビアンカも久利生も、その辺りについては基本的に見守る方向で固まってるそうだ。




