未来編 一緒にルコアのパートナーに
「ルコア、俺のパートナーになってくれ!」
まるで<挨拶>のようにダイニングに顔を出した未来がそう口にした。そんな彼に対してルコアは、
「そうだね。あなたがもう少し大人になったら考えてもいいよ」
穏やかに微笑みながらそう返す。もうすっかり未来のプロポーズにも慣れた様子だ。すると未来も、
「おう! 絶対だぞ!」
と言いながら朝食の席に着く。はぐらかされていることに憤るでもなく当たり前のように。
彼としてもあくまで自分の気持ちを正直に伝えているだけでそれをルコアに押し付けるつもりはないんだ。そんな彼に今度は黎明が、
「駄目だよお兄ちゃん。ルコアは私のパートナーになるんだから」
分厚いベーコンをガシガシと噛みながら睨みつけるような視線を向けつつ口にする。これにはルコアも、
「あはは……♡」
少々苦笑いだ。軽口のようでありながら黎明の言葉は決して冗談じゃないんだよな。彼女は彼女なりに本気でルコアに想いを寄せている。まあ、実年齢ではようやく十歳になろうかという年頃なだけに、優しくてかつフィジカルもずば抜けているルコアへの憧れを勘違いしてしまっているだけの可能性も高いだろうが、それでも本気なのは事実だ。
これに対して未来は、
「ケチケチすんなよ。俺も黎明も一緒にルコアのパートナーになりゃいいじゃん」
真剣な表情で口にした。さすがに<獣人>の血を引いてるだけあってその辺りの捉え方が地球人とは根本的に違ってる。意図してそう誘導したわけでもないのに当たり前のようにそう考えるんだ。
ただ、未来はクロコディアとしての、黎明はアラニーズとしての、生来備えている性質を発現させているんだろうが、体はサーペンティアンとしてのそれを持ちつつオリジナルの方は地球人として生を受けたルコアはさすがにそこまでおおらかではいられない。
だから、陽と和と麗のようにそういう気持ちをストレートに受け止めることはできなかった。未来のことも黎明のことももちろん好きだが、二人が生まれた時から世話もしてきたルコアとしてはどうしても<恋愛対象>というよりは<弟妹>という認識が強く出てしまっているんだろう。
野生であればそれこそ血縁のある相手とも番ったりすることはある。なるべくそうならないような習性も持ちながら決して万全じゃないんだ。ゆえに焔と彩および新と凛のような事例も必ずしも珍しいものじゃなかった。それもあって俺もとやかく口出ししなかったんだよな。
しかし、地球人としてのメンタリティが強く出ているルコアにはピンとこないみたいなんだ。




