表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2772/2985

陽編 日常の一部そのもの

こうやって(ひなた)(まどか)(うらら)が本当に波風の立たない、他人から見たら退屈過ぎる平穏な日々を送っている中でも、世界そのものは決して止まることなく動いている。


その証拠に、今日、(かい)がついに息を引き取ったんだ。いつものように子供達にじゃれつかれるままに寝ていた姿のままで。そんな彼の異変に最初に気付いたのは子供達だった。いつも自分達が遊んでいるのを穏やかに見守っていてくれた<おじいちゃん>の様子が変わったのを察してしまったんだ。


うっすらと目を開けているものの自分達の誰のことも見ていない。撫でてもらおうと手のところに行けば撫でてくれるのに反応がない。なにより、体があたたかくない。彼に寄り添ってそのぬくもりに包まれて寝たりする子供もいるのに、今日は誰もそうしなかった。あたたかくないからだろう。


<命のぬくもり>


が失われてしまったんだ。


子供達は<おじいちゃん>を起こそうとしてか体中を舐めてくれていた。毛繕いしてくれていた。けれどもうおじいちゃんは反応してくれない。


すると子供達の何人かが、


「みーっ、みーっ」


と鳴き声を上げ始めた。なぜかは分からないが不安を覚えてしまったんだろう。すると他の成体(おとな)達も異変に気付いて近付いてきて、一緒に彼の体を舐め始める。


彼がどれだけ仲間達に慕われていたかが分かる光景だと思った。(そう)が亡くなった時にもここまでじゃなかった。(そう)に対しては<尊敬>と<畏怖>を感じていたからだろうか。ボスとしてある意味では一線を引いていて、『慕う』というのとは少し違っていたのかもしれない。


対して(かい)は、仲間達から『慕われて』いたんだと思う。ボスとして頼りにしながらも親しみを覚えていたんだろうな。


(そう)(かい)、どちらがよりボスとして相応しかったのか俺には分からないし、それを詮索しようとするのは二人に対する<不敬>だとも思う。あくまで(そう)(かい)は<そういうボス>だったはずなんだ。俺がとやかく言うのもおこがましい気がする。


そして子供達の様子がいつもと違っているのに気付いたのは(ひなた)(まどか)だった。


祖父(じい)ちゃん、なんかおかしくない?」


「ちょっと見て」


二人が声を掛けてきてくれたことで俺も画面に目をやることができた。この時、エレクシアは萌花(ほのか)錬慈(れんじ)に付き添って密林に入っていて、イレーネはドーベルマンDK-aと共に哨戒に出ていたんだ。加えてセシリアも家事が忙しくてバイタルサインをチェックできていなかった。


こんな時もあるさ。


それにあんまりにも穏やかな<日常の一部そのもの>って感じの最期だったしな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ