陽編 勝手な判断でしたことが
<仕事>というのは本来、指示されたことを指示されたように確実にこなせばいいもののはずだ。いわゆる<クリエイター業>などの場合はまた違うとしても、<一般的な労働者>が担っているような仕事はあらかじめ決められたものを決められた通りにこなせばいいものが多いんじゃないのか?
大昔は、
『言われなくても自分で考えて動け』
的な考え方が蔓延ってたらしいが、それは<労働者を使う側の怠慢>というのが実態だったらしいじゃないか。要するにきちんとマニュアル化することを怠り、しかも具体的な指示も出さずに自分達が望んでる通りの仕事を労働者側がこなしてくれれば御の字で、そうじゃなければ労働者側の責任にして切り捨てたりしたんだろう? そんな使い方をしてるから労働力を使い捨てる形になり、労働者から敬遠されて、
『人はいるのに労働者不足』
なんて事態に陥っていたとも聞く。しかも実際の仕事の現場でも『言われなくても自分で考えて動け』なんてのを真に受けた労働者が勝手なことをして損害が発生していたりもしたそうじゃないか。
『勝手な判断でしたことがそもそも間違っていてそれをリカバーするために残業する羽目になった』
なんてことも珍しくなかったみたいだな。本来なら必要なかった残業が発生し<残業代>を支払うことになった時点で<損害>だろう。
だからまともな企業は業務をマニュアル化し、手順通りに仕事をこなすことを求めるようになった。特に、決まった作業を決まったようにこなせばいい現場については。そういうところではより<効率>が求められるからミスを低減し誰がやってもだいたい同じようにこなせることを目指して『勝手な判断で勝手なことをさせない』のを徹底するようになっていったと。
『指示されなくても正解を引き当てさらに利益ももたらす』
なんてことを成し遂げた者も中にはいたのかもしれないが、そんな例外的な成功例をまるで普遍的なことのように語り自分達の手間を厭う者達の怠慢が蔓延ったことが<ブラック労働>をのさばらせたとも聞いたよ。
実際、俺がまだ学生だった頃にアルバイト先で勝手なことをした奴がいてしかもそれがまたどうしようもないミスで後始末のために余計な手間を食わされたことがあったり。その時は残業までしなかった。フォローの多くはメイトギアが受け持ったからだろうな。しかし現場担当者が、
「これだから人間のバイトなんて要らねえんだよ。メイトギアにぜんぶ任せりゃいいんだ」
と吐き捨てたのを俺は耳にしてしまったんだよなあ。




