陽編 その辺りもお見通し
それでも、両親が亡くなった後に光莉の病気が進行してそれと共に俺自身も精神的に追い詰められていってもなお『光莉のことが頭をよぎって』自分を抑えていられたのは、彼女との関係が良好だったからだと思う。そうじゃなかったら、
『どうなろうが知ったこっちゃない』
とか思ってただろうし。だが俺は妹に対して横暴だったり理不尽だったりしないように心掛けることができていた。
まあまあ年齢が離れていたからというのもあるにしても、それ以上に両親の俺や妹への接し方を見てたからだろうな。俺をちゃんと労って敬って慮ってくれてたのが<手本>になっていたからこそそれを真似してればよかっただけなんだよ。
もちろん喧嘩みたいになったこともあったさ。俺もまだまだ子供だったし光莉はそれこそ幼かったしで自分の感情とかを上手くコントロールできなかったから結果として衝突に至ったわけだ。でもそれがすごく嫌だった。やってしまった後で後悔した。素直に謝ることまではなかなかできなかったものの自分なりに『よくなかった』とは思ってたよ。だからか、両親も、
『ごめんなさいは!?』
みたいに強く責めたりしなかった。俺がまったく反省してなかったらさすがにもう少しきつく叱られたかもしれないが、たぶん両親にはその辺りもお見通しだったんだろう。子供のことをちゃんと見ていた人達だから。
子供のことをロクに見てなかったりただただ自分の思い通りになるのを期待してるだけの親だったらそこまで見ようともしなかっただろうけどな。
俺が今の俺でいられるのはどう足掻いたってどんなに屁理屈並べたってあの人達が『手本を示して』くれたからなんだ。それがなかったら俺はきっとこうなれていなかったと思う。もっと身勝手でそれこそエレクシアの力を笠に着てイキった振る舞いをしていたかもな。自分の思い通りに周囲を操ろうとして。もしそんな俺だったらシモーヌは俺のパートナーになってくれなかっただろうし、光も灯も俺に対して反発してた気がして仕方ない。何より俺自身がそんな親には反発せずにいられないだろうなと感じるんだよ。
自分がそう感じるんだから光や灯も身勝手でイキってるだけの俺に対して反発しても何も不思議はないな。
子供が親に反発するのだってちゃんと理由があるし原因があるはずなんだ。『理由や原因があるからって何をしてもいいわけじゃない』というだけで。その事実も認められない、ただただ自分だけが認められて許されて評価されたい親なんてどうすれば信頼できる? 俺には到底無理だ。ましてやあの人達の在り方を知ってしまったら。




