陽編 命を代償にする
俺達は基本的に自分以外の誰かの選択についてなるべく口出ししないように心掛けてる。特に否定的な物言いは。
代わりに当人が自ら選択したことがどういう結果をもたらしたとしても原則当人が背負うというのが大前提だ。その上で必要であればフォローもする体制は整えてある形だな。
決して『責任は取らなくていい。負わなくていい』的な話じゃない。むしろ責任はしっかりと取ってもらう。負ってもらう。あくまで当人だけじゃ対処しきれない時の<保険>的な仕組みだよ。地球人社会でも<保険>はあったし様々な<セーフティネット>もあった。それと同じことだな。さらに一歩踏み込んだ具体的なものというだけで。
特に<命を代償にする>ようなのは回避したいと思ってる。これは、
『命を代償にすれば何をやってもいいという考えを認めない』
ためのものでもある。地球人社会でも『自分も責任を取って死ぬ覚悟があればどんな残酷なことをしてもいい』みたいな考えが蔓延っていた時期があったと聞く。俺は自分の大切な人がそんな身勝手な振る舞いに巻き込まれてほしくないからこそそういうのは認めたくないし今の地球人社会では認められていない。
死刑制度が廃止されて『死んで責任を取る』なんてことができなくなったし。自分が犯した罪と向き合ってもらうためには生きててもらわなきゃ困るんだ。『死んで楽になる』なんてのも許されない。だからこそ<罪の意識>というものを認識させるためのプログラムも充実してるとか。まあ、その最たるものが、
『超AIを用いた仮想現実の中で新たに人生を経験させる』
ことだったり。これまでにも何度か触れたがその中で<被害者が味わったものと同様の痛みや苦しみ>を経験させるわけだ。
そんな<罰>をわざわざ作らなきゃいけないというのもそもそも本末転倒だと思う。自分で責任を負いきれない無責任な振る舞いは避けるべきだというだけのはずなのにな。
麗にはその辺りは理解できないにしても、陽と和はちゃんと理解してくれている。だから身内を危険に晒すことになるような無謀なことはしない。する必要を感じていない。二人とも強い攻撃性を見せるのは外敵が迫った時だけだ。先日のマンティアンに遭遇した時のように。
加えて誰かを貶したり蔑むこともない。そんなことをしなきゃいけない理由がない。自分のほんの身近な人間達の間でだけならこういうことも決して不可能じゃないさ。あくまでも自分がどうするかというだけの話だな。




