陽編 休憩所
「よし、それじゃ戻ろうか」
「そうね」
物資を積み込んで手続きを終えて陽と和は顔を見合わせてそう言った。すると、
「うあ〜」
ローバーの窓に張り付いて麗が恨めしそうに声を上げる。その様子を見ていたホビットMk-Ⅱのカメラ映像が俺のタブレットに映し出されていたんだ。
別に<監視>のつもりはないにせよ取り敢えず<仕事>の部分については見られる部分は見えるようにしている。もちろんプライベートやプライバシーにまでは踏み込まないように心掛けてるが。
で、この時の麗のそれは、
『おなかすいた!』
というニュアンスのものだったようだ。
「ごめんごめん」
「じゃあ食事にしようか」
陽も和も申し訳なさそうに笑みを浮かべつつ応えた。ローバーに乗り込み、倉庫から出てホビットサンク村のすぐ外にある<パパニアンの好物である果実が生る木>のところに移動させた。そこはいわば<休憩所>のようなものだった。
ちなみに他のパパニアンの縄張りにされないようにとホビットMk-Ⅱらが管理している。と同時にその木で収穫した果実も今回受け取った物資の中に含まれている。
『受け取った物資のをそのまま食べればいいんじゃないか?』
と言うかもしれないが、普通は仕事として受け取った荷物の中に自分が普段から買っている商品があっても、
『金さえ払えばいいや』
と勝手に自分のものにすることはないだろう? むしろそれが<当たり前>だろう? その辺りの認識についてもちゃんとしてもらうために敢えて『受け取った物資には手を付けない』のを徹底してもらってるんだ。
代わりにその木については休憩所としての機能も持たせるために熟した果実を一部残すようにもしている。それが陽達の<食事>になるわけだ。
ローバーが完全に停車する前に麗はドアを開けてアクロバティックな動きで屋根に上がりそこからジャンプ、木に飛び移って一番いい色に熟していた実を取りそのまま口にした。
人間なら『行儀悪い』と言われるところだろうが、このグループにおいては陽がトップでありその陽が許してる時点で麗の振る舞いはパパニアン社会においても責められるようなものじゃないんだよな。
ちなみにこの時の光景もホビットMk-Ⅱらが見ていたことで映像として捉えられている。
で、先に果実を貪りだした麗に続いて陽と和も木に飛び移り、それぞれ果実を手にして食事を始めた。麗はまあ見た目からして普通のパパニアンだからそれが当たり前だが、器用に木の上で寛ぐ陽と和の姿も、普通の地球人である俺にはなかなか不思議な光景ではある。




