陽編 バランスが一番取りやすい形
ちなみに<フォークリフト>というもの自体、地球人社会においてもいまだに普通に使われてるものだ。まあ<フォークリフト型のロボット>になってはいるものの、
『限られた仕事で限られた役目を果たすだけなら単機能で十分』
ということで、機能自体がすでに完成されていた各種機械は大きくその形を変えることなく運用が続けられている。<自動車>や<船>や<飛行機>もそれだな。安全性については改良が加えられていっても機能も見た目も根本的に異なるものにはなってしまわないんだよ。まあこれは<武器の類>もそうだが。俺達が使ってる<拳銃>も<自動小銃>も<ライフル>も、形状も機能も二十一世紀頃とはそんなに変わってない。あの時点で道具としてはほぼ完成されていたからだそうだ。
<レーザー兵器>や<ビーム兵器>も実用化されたりはしたもののそれらは対処されてしまうと有効なダメージを与えられなくなり、なんだかんだいって結局は、
『大きな質量を持つ固いものを超高速でぶつけるのが最も対処しにくい』
ということで<実体弾兵器>に戻ってきてしまったと。
自動車も船も飛行機も、それぞれ、
『機能と効率化を突き詰めればその形に落ち着いてしまう』
って感じなんだそうだ。個人レベルの移動手段としては自動車は<タイヤを持った箱型>が最も効率がいいし、『日数を要しても大量の荷物を確実に運べればいい』のなら船(特に輸送船)はああなるし、『空気があるところで揚力を得るのなら翼を用いて推進にのみエネルギーを用いるのが最も効率的』ということで飛行機(特に旅客機)はあの形状を維持してるわけだな。
<ブランゲッタ>は非常に優れた装置だが、エネルギー消費はとんでもないんだよなあ。<アミダ・リアクター>が実用化されてなければ本当に大変な<金食い虫>だったそうだ。しかもブランゲッタ自体は推力を発しないからそれはまた別に用意しなきゃいけないし。一応、
『重力に関係なく任意の方向に『落ちる』という形で進む』
ことはできるが、これはこれで重力がなければ機能しないしその制御にもまた膨大なエネルギーを消費する。それこそ小型のアミダ・リアクターじゃ賄いきれないくらいの。
なんにせよ、
『便利を追求するには相応のエネルギーが必要になる』
ということだ。だからどこかの時点でバランスを取らなくちゃいけなくなる。で、そのバランスが一番取りやすい形に落ち着くと。
自動車だって<車輪を持った箱>という意味じゃ<馬車>とそこまで違わないしな。




