お勤め(これで少しは楽ができるかな)
しかし、続く時には続くもので、なんと誉にも子供ができたらしい。
さらに、翔にまで。
一時期、仲睦まじく雄と並んでる姿が確認できたと思ったら、その数ヶ月後には子供を抱いてたんだ。
タカ人間の場合は、育児は基本的に雌しかせず、子供ができて巣立つまでは雄は近付かせてももらえないことが多いようなんだが、それでいて、案外、同じ相手と長く番うこともあり、特に気に入った場合だとずっと一緒にいる場合もあるようだ。鷹が俺のところからいなくならないのも、彼女なりに気に入ってくれてるということなんだろうな。
その割には時々威嚇してきたりして怖いが。
とは言え、気に入ってくれてるんならありがたい。俺も、彼女のことは好きだし。
まあそれはそれとして、誉と翔のことについても、特に何か大きな事件でもない限りは見守るだけにしようと思う。
この場合の<大きな事件>というのは、ボノボ人間やタカ人間の本来の習性や生態の範囲内で起こるあれこれのことじゃなく、凶や蛟のようなとんでもないのが関わってきたりした場合。という意味だ。
それによって何か辛い結果になるとしても、な。
そもそも、誉にはメイフェアが付いてるし、大丈夫大丈夫。
翔も、ヒト蜘蛛がいる向こう岸にでも渡らない限り、後はカマキリ人間くらいしか敵はいない訳で、そんなに心配は要らないだろう。
「誉様のお子さんが誕生しました」
メイフェアが嬉しそうに報告してくる。彼女にとっても家族のようなものだからな。しかもメイフェア自身がまるで群れの一員のように溶け込んで、一緒に行動してる。彼女にとってはそちらが<家>みたいなものか。
ロボットだから、メンテナンスさえちゃんと受けていれば後はボノボ人間の暮らしに合わせるのも何の苦痛もないし、幸せそうだ。
コーネリアス号の件や、グンタイ竜の女王の件もあったが、彼女なりの幸せを見付けられたということなのかもしれない。
どれほど旧式化してても関係ないここでは、少なくとも誉が生きてる間は問題なく稼働できるだろうし、誉の子孫を見守っていくことになるんだろう。彼女がそれを選ぶなら、俺は口出しするつもりもない。
鷹も彗が巣立つまではまたそっちに集中することになる筈だ。
密はすっかり最後まで求めなくなったし、刃は元々割と淡白だったし、当分は伏とのお勤めだけか。
少しは楽ができるかな。




