陽編 ホビットサンク村
そうこうしているうちに陽が運転するローバーはホビットサンク村に到着した。村の入り口にはガードマン役のホビットMk-Ⅱがいて、そこで入村のための手続きが行われる。書類の確認と記名だ。
これも地球人社会では機械で処理するから一部を除いて<紙の書類>なんてものはもう存在しないんだが、まあその辺はちょっとした<お遊び>だな。もしかすると必要になる可能性だってゼロじゃないし、それらの運用のシミュレーションにもなるし。
「ハイ、書類ヲ確認シマシタ。ソレデハコチラニ、オ名前ヲ記入願イマス」
ガードマン役のホビットMk-Ⅱがバインダーに挟まれた紙を提示する。すると陽と和も手慣れた様子で自分の名前をそこに記す。
もう何度も行ってることだからなあ。そういう時は<顔パス>にする場合もあるのかもしれないが、その手の『なあなあに済ます』なんてのはあくまでプライベートの範疇においてのみに留めた方がいいだろう。地球人社会においてもなあなあに済ましていたことで大きなトラブルに発展したことがあったとも聞くし。
それに後になってルールが追加されたりすると、
『前はそうじゃなかっただろ!』
とゴネるのが出てくるのが常だし。陽や和はそういうタイプじゃないとはいえ、人間が増えてくればそんな感じのも出てこないとは限らない。そこも想定しておかないと。
こうしてちゃんと手順を踏んで二人はローバーを村の中に進めた。この間、麗はローバーの中でおとなしく待ってくれている。最初はついてきたりもしたが、その必要がないと察してくれたんだろう。別に彼女の興味を引くようなものも村の入り口にはないし。
ホビットサンク村は、徐々に規模を拡大しているものの現時点では直径二百メートルにも満たない小規模な村だ。
その一角に倉庫が建っている。陽はゆっくりとローバーを走らせその前に止めた。すると中から三機のホビットMk-Ⅱが出てきて、
「オ疲レ様デス」
声を揃えて出迎えてくれる。これに陽と和も笑顔で、
「お疲れ様です」
やっぱり声を揃えて応えた。こういう社交辞令的なやりとりについても当たり前のこととして身に付けておいてほしいと考えてホビットMk-Ⅱ達にもやってもらってる。元々ホビットサンク村は人間の営みをシミュレーションするために作った村だしな。日常的にそうしてもらってるからちょうどいいんだ。
そしていつも通りにローバーのリアゲートを開けて、<オリコン>と呼ばれる折り畳み式のケースに入った物資を受け渡したのだった。




