陽編 迫害する理由
ここで暮らし、野生の生き物達の在り方を実際に目の当りにすることで実感したんだが、野生において<普通じゃない個体>の存在は、なるほど<普通の個体>に比べれば諸々不利になる面があったのも事実だが、しかし同時に、
『だから生きていられない』
ってほどじゃなかったのも事実なんだ。先祖返りを起こし地球人そのもので生まれた順が光と出逢うまで生き延びられたのもその一例だよな。普通は母親に見捨てられて生まれて間もなく死ぬはずだった個体であるにも拘らず彼は生き延びてきた。順と違って見た目は<普通>であっても様々な事情により<イジメられる側>となってしまった個体だった場合でも、ただ『イジメられて死んでいく』だけとは限らない。
<群れから逃げ出して一人で生きていく者>
<他の群れに合流してそこで普通に生きていく者>
そういう実例が確認されているんだよ。走と凱だって『レオンとしては普通じゃなかった』が、ボスにまでなって凱は穏やかな余生を送ってさえいる。
『普通じゃなきゃ生きられない』
『普通じゃなきゃ生きてる価値もない』
のならそんなことが起こるわけがないだろう?
ましてや地球人のようにネットを通じて<自分の価値観にそぐわない者>をわざわざ探し出してまで集団で袋叩きにするようなこともないしできない。『普通じゃない』ことがそのまま<生きることを全面的に決定的に否定される根拠>になるわけでもないんだよ。むしろ<適者生存>という形で『普通じゃない者が変化していく環境の中で生き延びる』なんてことさえあったりもするし。ゾウの鼻が長いのもキリンの首が長いのもそういうことじゃなかったのか?
<地球人社会の生き難さ>
ってのは結局、地球人自身が思い込みで作り出してる<幻想>が一番の原因になってる気がするよ。で、それがここにはないから対処すべきストレスも少なくて朗らかに生きてられるんだろうなあ。
そんなことを考えている俺の視界の隅に、メイを連れた玲が密林に入っていくのが見えた。この二人にしても、マンティアンらしく愛想がなくてこちらに迎合する素振りも見せてくれないが、それが<迫害する理由>にはならない。こちらに敵意や害意を見せてくるわけじゃない以上、迫害する理由がない。<俺達にとっての普通>とは違っていてもそれはこれといって問題じゃないんだ。
こういう風に考えると、
『考え過ぎるのはよくない。もっとシンプルに生きるべきだ』
というのもまあ分からなくもないんだよな。




