陽編 年齢
<親戚の子>的にそれなりに情を抱いていた相手である凱の様子を見つめるシモーヌにも<年齢>を感じてしまった。そうだな。俺と同じように<老化抑制処置が実用化される以前の四十代くらい>って感じか。
顕現した時点では<オリジナルの秋嶋シモーヌ>の年齢は俺の半分くらいしかいってなかったが、彼女が受けている老化抑制処置は俺が受けた者に比べると二千年分の技術格差がある。俺が受けたものは二百年近い効果があるのに対して彼女が受けたものは百五十年ほどだった。
そういう意味では、シモーヌの方が俺より先に<寿命>を迎える可能性も十分にあるんだ。その辺りは老化抑制処置の効果が切れた後の変化次第かもな。
加えて<老化抑制処置の効果がもつ期間>は、多少の個人差もあるとのこと。確認されている限りでは<一割程度>って感じらしい。だから俺の場合は<二十年前後の誤差>か。
まあその辺はなってみないと分からないから現時点ではなんともな。
ちなみにその誤差について気にする人間は気にしてて、効果が早く切れたことで裁判を起こしたのもいたらしい。が、いかんせんその辺りは事前に、
『効果には個人差があります』
と説明を受けるので、残念ながら<一割程度の誤差>では補償は受けられないそうだ。起こされた裁判もすべて原告側の敗訴となっている。気持ちは想像できなくもないものの、老化抑制処置の効果が切れてもきちんとケアを受けていればそんないきなり老け込んでしまうわけじゃないしな。それを怠ったことで加齢が進んだなら、さすがに。
加えて百数十年も現役で働き続けると多くが『もういいか』と思うらしい。そして不思議なことに『遊び倒して』きた者も同じように思うんだとか。
数十年しか生きてない者は、
『そんな二百年くらいで』
と思うかもしれないが、俺も昔は思っていたが、密度の高い人生を送っていた者ほどそうなる傾向にあるとも。だから<永遠の命>に対する渇望みたいなものはそれほどじゃないらしいんだ。
もちろんそれを望む者も確かにいるから研究は続けられてるとも聞いた。それが実を結ぶかどうかはもう俺には確かめようもないだろうけどな。
ただ、俺としてもここからさらに百年も二百年も生きてどうこうという気はあまりしないんだ。
『この地に出来上がっていくであろう社会を見届けたい』
という<想い>は確かにありつつも、<執着>と言えるほどのものじゃないんだよ。たぶん、光や陽や和達を見ていたら、
『任せられる』
って気になってくるからだろうとは思ってる。




