陽編 親(大人)の側の怠慢
<追いかけっこ>をして遊んでいる萌花と錬慈の姿を見てしみじみ思う。『先に生まれた』『後に生まれた』なんて関係なく、子供はこうして楽し気に遊んでられるのが一番だってな。
<生きるためのリソース>が不足していた頃は確かに子供であっても何らかの<仕事>はするしかなかったんだろう。それは<弟妹の世話>も含む話だったんだと思う。だが、リソースが増え社会制度も充実し子供を働かせなくても済むようになったにも拘わらず『子供に子供を世話をさせる』のは、
<親(大人)の側の怠慢>
ってもんじゃないのか?
『自分より小さい子の世話をすることでいろんなことが学べるだろ!』
とか言うかもしれないが、そんな<楽をしたい親(大人)にとって都合のいい話>を本気で信じているのか? そんな都合のいい話を信じて親(大人)の責任を子供に丸投げして実際に何が起こってるのか、ちゃんと現実を見たことがあるのか?
自分もまだ子供にも拘わらず<子供の世話>を押し付けられた子供がそのストレスをどういう形で処理しようとするのか、想像したことがあるのか? いや、そんなものは想像するまでもない。実際に兄弟姉妹の間で起こってることを見ればすぐに分かることなんじゃないのか?
<下の子に対して暴君のように振る舞う上の子>
なんてのは珍しくもない話だろう? だからこそ、
<姉(兄)に嫌な思いをずっとさせられてきた弟(妹)>
とかいう話が溢れていたんだろう?
俺は幼かった頃、親から、
『妹の光莉の世話をしろ』
とか言われた記憶はない。確かにまだ赤ん坊だった光莉に両親の意識がより向けられていたのは子供心に感じていたものの、両親も俺のことを無視したりはしなかった。
『お兄ちゃんなんだから自分でできるでしょ』
みたいに言われた記憶もない。光莉に対してよりは手薄だったとしても俺のこともちゃんと見ようとしてくれてたのは感じたよ。だから俺も、光莉を妬んだりせずに済んだんだと思ってる。光莉に嫉妬して彼女につらく当たる必要もなかった。
そんな俺の両親がしてくれたことを俺もするように心掛けてた。
まあ、さすがに子供の人数が多すぎて俺一人じゃどうしようもなかったからエレクシアやセシリアやイレーネの助けを借りたし、ドーベルマンDK-aをはじめとしたロボットを作ってその力も借りたんだ。
『使えるものは何でも使う』
という形で、<親としての責任>を果たそうと努めてきたつもりだ。それを光も受け継いでくれている。その結果が、陽や和、萌花や錬慈の今の様子に現れてるんだろうな。




