陽編 実質的な指揮系統
こうして<実質的な指揮系統>は光を中心にしたものに移行していたが、正直なところだからといって何か大きな変化があるような実感はなかった。なにしろ光は昔から必要とあれば自分で判断してくれてたしな。
陽と和も、パパニアンとしてはもう立派な<成体>であり必要十分な能力も持っていて、その上で<人間>としての節度もわきまえてくれている。
実年齢では<十代半ば>であり、地球人社会だとその辺りの年齢ではまだまだ<子供>扱いだが、その地球人社会でもかつては十代半ばで成人と認められていた時期があったはずだ。社会の複雑化に伴って覚えなければいけないことも増えたために<成人できる年齢>が高くなっていったのもあるんだろう。しかしここではまだそこまで複雑な社会にはなっていない。実年齢が十代半ばでも十分に必要なことは理解できるはずなんだ。
これは、來と久利生の子である<未来>も同じ。実年齢こそまだ十一歳でありつつも外見上はすっかり<逞しい青年>だった。
その未来は、ルコアと<いい感じ>になっているようだ。元々ルコアに懐いていた彼だったが、牙斬の一件で自分を庇って重傷を負った彼女にさらに強い気持ちを持つようになったらしい。当時の彼はまだ二歳だったにも拘わらずだ。地球人は<幼児期健忘>という形で乳幼児期の記憶のほとんどを失ってしまうが、獣人達の多くはそこまでじゃないらしく、自分が生まれて間もない頃の記憶も残っている場合が多いと推測されている。それの影響があるのかもしれない。
で、
「ルコアは俺を守ってくれた。だから今度は俺がルコアを守る」
そんなことを何度も口にしてるそうだ。それに対してルコアはくすぐったそうに、
「別にそこまでしてくれなくていいよ」
と返すんだとか。しかしその表情はどこか嬉し気で、決してまんざらでもないんだろうな。なにしろ未来自身が、実に<好青年>だし。
そう遠くない将来、また新しい命を迎えることになるかもなという予感。クロコディアである未来とサーペンティアンであるルコアの間で子供ができるかどうかという問題はあるにせよ、二人の関係性はもうすでにお互いをパートナーと認めてるも同然らしいし、それをビアンカや久利生も認めている。
ちなみに未来を庇って受けた傷跡は、サーペンティアンとしての回復力があってもルコアの体にうっすらと残っているものの、透明であるがゆえに使っているファンデーションで隠れてしまってほとんど分からないそうだ。




