陽編 俺の跡を継いで
ああそうだ。<途絶えて困った家>なんてものも存在しない。
もちろん、その<家>と深い関りがあり取引関係なんかがあったところは一時的に困ったり、中にはそのまま立て直せなかったりした事例もあったかもしれないが、だからといって<人間社会そのもの>が崩壊することはなかったのも事実なんだ。
結局はその程度なんだよ。個人がどれほど『我が家が途絶えれば世界が破滅する』と考えていようとも現実にはそんなことはなかった。それに執着しているのは当事者だけでしかない。
だから俺も、<家>には拘らないでおこうと思ってる。確かに俺に連なる者達がここに築かれていくであろう<朋群人社会>の根幹を担うことになるのは事実でも、それ自体は別に<俺の血筋>である必要もなかったしな。地球人社会製のAIやロボットに<命令>を与えられるのはあくまで俺だけで、俺の子供達はそうじゃないし。『俺の意向があれば有利』というだけだ。そしてそれは、<俺にとって任せられる相手>であれば俺の血縁者でなくてもいい。ビアンカでも久利生でもシオでもレックスでもいい。
そういう話なんだよ。
まあ、ビアンカと久利生は俺にとっては<親戚>ではある。しかし二人が<灯の家族>でなくても頼れる存在であることに変わりはない。
<家>に執着する理由は俺にはないんだ。だからこそ、家に執着し個人の人生までを強制的に操ろうとする考え方には共感できない。
陽や和に対しても、いずれは俺の跡を継いで<朋群人社会>を見守っていってもらいたいとは思うものの、強制するつもりもないんだよ。本人達が望んでそれをしてくれるのなら口出しするつもりもないが。
現時点でも、光が俺の役目のほとんどを引き継いでくれている。
この<手記>は俺の主観だから基本的に俺がまだあれこれ指揮してるように感じるかもしれないが、実際には光が取り仕切ってくれてるんだ。俺は基本的に<唯一の地球人である俺でしかできないこと>を主にやってるだけだな。つまり、『AIやロボットに命令を出す』とかの。
一応、光の指示には従うように命令は出してるんだが、最終的なそれが俺の役目であるのは変わってない。
だからこそ、俺が生きてるうちに光達が直接命令を下せるAIやロボットの開発が求められてるんだ。今のペースでも俺の健康寿命が尽きる前には完成する見込みではあるもののやっぱり不安もある。
だがそこについては残念ながら光莉号およびコーネリアス号のAIやエレクシア達には頼れないし、力になってもくれないんだ。




