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既に情が(いや、確かに可愛いのは可愛いよ)

ボクサー竜(ボクサー)は、群れを組んで生活するからか、爬虫類によくみられるような生みっぱなしで放っておくという形じゃなかった。温めたりまではしないものの、基本的には卵を守り、孵った子は、親、と言うか群れ全体で面倒を見て育てるという習性があるのが分かってた。


とは言え、人間や鳥類のそれに比べると<放任主義>っぽくはあるが。しっかり世話を焼くというよりは、子供が成体の後をついて回って常に近くにいて守ってもらうって形らしい。しかしその為には成体のボクサー竜(ボクサー)についていかないといけないので、インプリンティングによりついていくべき相手を覚えるということのようだ。


で、孵化直前だったボクサー竜(ボクサー)の卵を持ち去った何者か(おそらくボノボ人間(パパニアン)だと思われる)が落としていったらしいそれが(ろく)号機の前でたまたま孵化してしまって、眼前にいた陸号機を親だと思ってしまったと、そういうことらしい。


…なんだ、このほのぼのとした話は?


でもまあ、そういうこともあるのか。


という訳で、この奇妙な<親子関係>について、俺達は観察してみることにした。


「可愛い♡」


マイクロドローンの映像が映し出されたタブレットの画面の中で、陸号機の後をちょこちょことついていくボクサー竜(ボクサー)の子供の姿を見て、シモーヌは思わず声を上げる。そんな様子が<女の子>だなあと思ってしまったり。


まあそれはさておいて、群れになると厄介で危険なボクサー竜(ボクサー)も、こうしてみるとまったく仔犬と大差ないな。


…いかん。既に情が移り始めてる。


だけど確かに可愛いなあ。


ただ、群れからはぐれたボクサー竜(ボクサー)の子供なんて、他の獣から見れば格好の獲物だ。実際、(じん)に狙われたし。こうなると、(よう)(ふく)はもちろんのこと、この大きさなら(ひそか)や子供達にだって狙われる可能性がある。なんか、それも可哀想だなあ。


いやいや、可哀想とか言ってても仕方ない。ああいうのが他の獣に狙われることも摂理なんだから。


でもでも、懸命に陸号機に置いて行かれまいとついていくその姿が健気で健気で。


だから俺も、


「あのボクサー竜(ボクサー)の子供がどうなるかは分からないが、しばらくは陸号機を親代わりにしてもかまわないか」


とは言ってしまった。


「そうですね。いずれは他の動物に食べられる運命だとしても、今の時点で見捨てるのも忍びないですし」


シモーヌもそう言ってくれる。


そんな俺達の視線の先には、(ほむら)達もおやつ代わりに食べてたバッタに似た虫を捕らえて、陸号機のボディに乗ってムシャムシャと食べる姿が。


ちくしょう。こんなの見ちゃったら放っておけないじゃないか。



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