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陽編 不健全

だからこそ<AI>と<AIによって制御されるロボット>は、人間同士の諍いにより被害が生じる可能性が高いと判断すると躊躇なくその間に入って対処しようとする。人間のように<とばっちり>や<巻き添え>を恐れることもない。


人間の教師は自身が受け持つクラスで<イジメ>があったとしても面倒に巻き込まれるのを嫌って見て見ぬふりをしたりそれこそ隠蔽工作さえ図ったりすることもあるにせよ、AIやロボットはそれを厭うこともないんだ。教師が、


『余計なことをするな!』


と怒鳴ったりしてもそれを恐れたりしないし恐れる必要もない。それどころか教師の言動を記録して必要とあれば<証拠>として提出する場合すらある。


こういう状況を、


『人間がAIに支配されている! 不健全だ!』


と声を荒げる者もいるが、いやいや、本来はそれを御する立場の者が『イジメを見て見ぬふりをする』のは<健全>なのか? 何のために<役目>が与えられ<立場>が与えられてるんだ? 見て見ぬふりをし隠蔽工作を図るためじゃないだろう?


どれほど理想論を並べようと、教師の採用に<適性試験>を行おうと、試験を行った時の当人と教師として働きだしてからの当人は『まったく同じ』というわけにはいかないのも人間というものじゃないのか?


教員免許を更新制にしてその度に適性試験を行っている地域もあったりするらしいもののそのための手間と費用は決して馬鹿にならないらしい。だからそれを採用していない地域も多い。メイトギアを補助教員のようにして運用することで教員の普段の振る舞いに問題が見られればその時点で<適性試験>を行う形のところも多いそうだ。


まあそもそも、かつてのように、


『教師にでもなるか』


『教師にしかなれない』


なんて形で教師になろうとしなくても他にも<仕事>はあるからな。適性のない人間が無理に教師になる必要も続ける必要も今はないんだ。『自分には向いてない』と感じたらすぐに辞めればいい。再就職も容易だ。


きちんと<教師になる動機>を持った者だけが教師を目指せばいい環境ではある。


まあそれでも<問題を抱えた教師>というのもいなくならないし、<教師の不祥事>も完全にはなくなってないあたり、人間(地球人)という生き物の業の深さを感じるが。


ここにできていく<朋群(ほうむ)人社会>でもそういう問題は完全には回避できないだろう。人間という生き物はそう単純なものじゃないわけで。


それでも何も手を打たないというのは違うよな。



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