陽編 福音
陽達の朝は早い。幼かった頃はそれこそ空が白みだしたら目を覚まして遊び始めていた。
『寝てるなんてもったいない! 遊ばなきゃ!』
とでも言いたげな感じでな。これは光や灯もそうだった。光は騒々しいタイプじゃなかったが、起きると同時に絵本を持ってきてエレクシアに読んでもらってたな。
もちろん俺も読んであげてたが、さすがに付き合いきれなかったのも正直なところだ。
『親なんだからちゃんとするべきだ!』
とか言うのもいるだろうが、俺も普段からそんな感じのことを言ってるように思うだろうが、俺自身は、
『親だって生身の人間だ』
と考えてる方だよ。あくまでも、
『親だって生身の人間だと言いたいのなら子供だって生身の人間であることを認めなきゃ筋が通らないだろ?』
と考えてるだけで。自分は生身の人間であることを理由に甘やかしてほしいが、子供が甘えることは許さないなんてのは<悪質な甘え>だと思ってる。
だからこそ無理はしないし、親の都合で子供に無理を強いるのも避けようとしてるだけなんだよ。
ましてや自分が楽をしたいから子供に我慢を強いるなんてのはな。でもまあ、エレクシアがいなければ続けられるようなことじゃないのもまた事実。そこはカッコつけても仕方ない。
メイトギアの実用化は地球人にとってはまさしく<福音>だったと思うよ。それがなかったら今の地球人社会はなかっただろうなと思うくらいに。
そんなエレクシアをはじめとしたロボット達のおかげで陽も和も本当に健やかに育ってくれた。節度をもって子供達と接していられたのも間違いなくそのおかげだしな。
そしてちゃんと自身が人間であることを認められてきたおかげで、陽も和も他者に対しても鷹揚でいられてる。まず自分の存在を認めてもらおうと承認欲求を拗らせたりもしていない。
自分を認めてもらいたいならまず先に自分が相手を認めなきゃいけないんだが、それができない地球人も少なくないよな。
で、
『向こうが先にこっちを認めようとしなかったからだ! なんでこっちが先に認めなきゃいけないんだ!』
と言い訳を並べようとする。
情けない話ではあるものの、俺の子供達や孫達はそんな振る舞いをせずにいられてる事実を見れば、結局は物心つく前からちゃんと自分の存在を周囲に認めてもらえてるという実感が必要なんだなと思い知らされるよ。
幼い子供のうちであれば『自分を先に認めてほしい』という振る舞いも可愛らしいもんで済むしな。
いい歳をした大人がそれをしてるのに比べれば。




