陽編 大きな弱点でありリスク
<誰かを大切に想う気持ち>は尊いし、それを大切にしたいと俺も思う。むしろ今の地球人はその気持ちを蔑ろにしていては穏当に種を維持していくこともままならないだろうというのも事実だろうさ。自分達を滅ぼせるだけの力を持ってしまった以上はな。
しかし同時にそれは<地球人にとっての大きな弱点>であり<リスク>であることもまた事実。そこを突かれることで望まぬ形で他者を傷付けることにもなってしまったりするし。
だからこそその弱点をフォローする必要も出てくるわけだ。今はここにその弱点を悪用しようなんて輩は存在しないが、いつかそういうのが現れないとも限らない。もちろんそうならないように子供の時点で追い詰められて他者を強く憎んだり妬んだりする者が出ないようにするのは大事だと思う。自分が追い詰められていなければ他者に対しても強く恨んだり妬んだりする必要もないわけで。
『他者を強く妬む』なんてのも、そんなことがありふれてしまってからでは解消するのは事実上ほぼ不可能になってしまうだろうな。実際、地球人社会でもそれを解消するべく大変な努力が続けられているもののいまだにその実現には至っていないわけで。
もう『他者を強く妬む』という感覚が浸透しきっているから、日常的にそういう感覚に曝されてしまう者が数多くいるわけで。
そんなものが当たり前じゃなかったら、
『誰からも教わらなくても<他者を強く妬むという感覚>を身につけてしまう』
こともそうそう起こらないだろうにな。
そういう者も絶対に出てこないとまでは言わないにせよ、確率はずっと下がるはずなんだ。
『最初から存在しないものを身につける』
なんてのは逆に難しいだろう。実際、俺の子供達は『他者を強く妬む』ということを知らない。誰かを羨むことがまったくないとは言わないものの、それを理由に誰かを露骨に傷付けようという発想がないんだよ。
地球人社会にはそういうのが溢れていただろう? 一面識もない相手を妬んで攻撃しようとする輩がいくらでもいた。そんな輩をなくすことはおよそ実現が可能という印象さえなかった。
そんなことを実現しようとしてその手の輩を物理的に排除しようとすればそれこそ決死の抵抗を行う者も出てくる。社会は混乱し治安も人心も乱れる。<独裁国家>が自分達にだけ都合のいい者だけで国を成立させようとしてそれ以外は排除しようと試みたりもしたが、そんなことが成功した事例は存在しないしな。
すべて失敗に終わってる。




