陽編 自然との付き合い方
なお、ドーベルマンDK-a伍号機を特別に思っている按も、ドーベルマンMPM十六号機を特別に思っているキャサリンも、不思議と他のロボットについては何とも思っていないのは今でも変わっていない。二人にとってはあくまでその二機が特別なだけなんだ。他のロボットがそれこそ壊れようがどうしようが微塵も心を動かされることはないだろう。
だから二人もロボットそのものに特別な思い入れがあるわけじゃないのも分かってるんだ。となればあくまで<例外的なもの>として対処すればいいんだろうな。
そんなこんなでマンティアンを追い払った陽と和は、自分達が好きな果実を実らせた木のところに麗と一緒にやってきて、三人で食事を始めた。この時にも周囲への警戒は怠っていないのがさすがだ。まだまだ野生が近い二人にとっては当然のことであり、むしろ麗が一番浮かれているとも言えるな。まあ麗の場合は<知識としての外敵への備え>を持たないからどこまでも直感頼りなのも影響してるか。
その辺りはロボットで補う。三人が食事をしている間、周囲を警戒してくれてるんだよ。
と、その時、
「びっ!?」
麗が怯えた声を上げて食べていた果実を放り出し、陽へと飛びついた。それに一瞬遅れて、
「ああ」
「そういうこと」
陽と和も事態を察する。しかし二人は身構えこそしたものの<戦闘態勢>までは取らなかった。三人の視線の先にいたもの、それは、
「あれは彗だよ。心配ない」
パートナーの清良がカルラを育てている間、彼女に近寄れなかった彗が、母親を亡くして死を待つのみだったフォルトナを立派に育て上げて巣立たせ、カルラを巣立たせた清良と再びパートナーとなって、自分の仮の縄張りをフォルトナに明け渡して戻ってきたんだ。
彗の姉である翔のパートナーだった泰もそうだったが、どうやら彗もアクシーズには珍しく清良一筋なようだ。と言うか、『他の雌には興味がない』と表現した方が近いか。実にその辺り淡白なんだよな。加えてわざわざ拾ってきた子供を見よう見まねで立派に育て上げるんだから、その点から見ても泰以上の<変わり者>と言えるかもしれない。アクシーズの雄は普通はそんなことはしない。それどころか幼いアクシーズの子供なんか<ただの餌>だ。だから相当『変わってる』。
しかしそういう例外的な個体がいるのはむしろ自然においては<普通>だからな。そこはちゃんとわきまえてないと<自然との付き合い方>も適切なものを見付けられないさ。
つくづくそう感じるよ。




