陽編 この社会に必要のない人間
今の俺達の<社会>には、<人間に対して攻撃的な人間>はいない。確かに素戔嗚やイザベラやキャサリンは攻撃的な様子を見せることもあるが、これもあくまでこちらが接し方をわきまえてさえいれば向こうから一方的に攻撃を仕掛けてくることはないんだ。
だが、地球人社会には顔見知りですらない相手に対して事情もロクに知らずに一方的に攻撃を仕掛けてくる奴がいるよな。そんな奴が今の俺達の社会に紛れ込んだらどうなる? まあ一人くらいなら対処しようもあるにせよ、五人も十人もとなってくればそいつら同士で必要のない揉め事を起こして平穏をかき乱すだろう。
つまりそいつらは、
<この社会に必要のない人間>
なんだよ。<社会における価値>で個々人の<生きる価値>を決めるなら、そんな奴らはそれこそ<生きる価値のない人間>ということになってしまう。なんて勝手に決められて嬉しいか? 納得できるか? 『納得できない』ならそれが<答>だろう。
そして、
『同じ人間に対して攻撃性を向けない』
のは必ずしも、
『生きる力が弱い』
ことを意味しない。なにしろ陽も和も、防刃防弾ウェアに身を包み、斗真が打ったナイフを装備し、F-1やF-2で新たに作った自動小銃を構えて、今日もパトロールに出ている。
陽がいるなら当然、麗も一緒だが、彼女はそれこそ自分が襲われでもしない限りはおとなしいもんだ。そして彼女はただ『三人で食事に出ている』だけだと認識してるらしい。だがそれでいい。こっちの都合を理解してもらう必要もない。
そもそも陽と和がパトロールに出てるのも、そこまで必要があってのことじゃないしな。防衛についてはロボットに任せておけば問題ないわけで。
そしてそんな三人を、<指揮官>として光がドローン越しに見守っている。
と、
「アラート。要警戒対象の存在を補足。識別はレッド」
早期警戒網に捉えられた<要警戒対象>を光が確認、それを陽と和に伝える。<識別レッド>とは<危険度レッド>つまり、
<最も危険な敵>
ということだ。この場合は大抵<マンティアン>だな。
「了解。対処を開始する」
陽がかつてのやんちゃ坊主の面差しなんてどこへやら、まるで生え抜きの兵士のごとき精悍さをはらんだ声で応え、和も、
「コピー」
と簡潔に応えた。
すると二人の様子を察した麗が後ずさって距離を取る。危険が迫っている時の様子だと知っているからだ。そして彼女が下がった先にはドーベルマンDK-a一機とホビットMk-Ⅱ三機の混成部隊。もちろんバックアップのための部隊だ。




