ルイーゼ編 しかし現実はそうはなってない
まあそもそも、十代半ばに見える少女が常に全裸でいるのにそれを放置してる上に誰も気にしてない時点で<地球人社会の常識>はまったく意味を成してないからなあ。
俺も幼かった頃の光や灯が服を着たがらないのを目の当たりにしてきて慣れてしまったし、シモーヌやシオやレックスは<生き物の専門家>であるからか人間の肉体についても<生物の一種のそれ>という認識が強くて基本的に特別視してないし、ビアンカや久利生は医療従事者としての経験に加えて職業軍人ゆえの割り切りもあってかやっぱりそこまで気にしてない。これはメイガスも同じだった。ルイーゼは単に『関心がない』だけだが。
しかも、コーネリアス号のメンバーはほとんどが大なり小なりその手の些事には頓着しない傾向があるそうで、だからこそ惑星探査チームに選ばれたというのがあるんだろう。なにしろ、ここに不時着して帰還が絶望的になった時点で、
『地球人という種を定着させる』
ためにメンバー同士で<カップリング>さえ行うほどだしな。まあそれは元々、『惑星探査チームとして』想定されていたことであり、その部分を容認できる人間でなければ採用されなかったとのこと。無論、ある程度は当人同士の要望も考慮しつつではあるが。
さりとてその時点で『普通の地球人とは違ってる』とも言えるか。
そんなコーネリアス号のメンバーが<例の不定形生物由来の朋群人>の中核をなしていくんだから、やっぱり地球人社会そのままにはならないだろうな。
それでも、<人間>が増えてくれば<価値観の衝突>なんかも起こり始めるだろうから、その中でいろいろな軋轢が生まれてくる可能性は高いだろうが、そこは承知の上で地球人社会でのあれこれを奇貨として活かしていかなきゃいけないと改めて思う。
だからこそルイーゼと斗真の間に子供ができたことについても、俺達はただその事実を受け止めて、生まれてきた命を迎えようと思うんだ。
だいたい、
『先祖返りを起こした獣人は保護するのに、駄目な親が生んだ子供は見捨てる』
とか、おかしいだろ。
フィクションならここでルイーゼが母性に目覚めて感動的な展開になったりするのかもしれないが、そんなことが当たり前に起こるならルイーゼの母親は<バーンシュタイン姓>を名乗ることにはなってなかったし、ルイーゼの母親自身、ちゃんと娘を母親として愛せてたはずだよな。しかし現実はそうはなってない。フィクションの展開は現実にはまず起こらないからこそフィクションなんだということだ。




