ルイーゼ編 地球人の姿をしたクロコディア
水帆は、種族的には<純粋なクロコディア>だ。しかし<先祖返り>を起こしたことで姿は完全に地球人のそれだったため命を失うところだったのを救出し、俺とシモーヌの子として育てることになった。
とはいえ、俺もシモーヌも肉体はあくまで地球人のそれだから、ずっと水中で暮らすことはできない。対して水帆は見た目こそ地球人と同じでありつつ、肉体の構造についてはクロコディアのそれを受け継いでいて、逆にずっと陸上で暮らすには適していなかった。だから俺とシモーヌがつきっきりで世話をすることは無理だったんだ。
この点は、クロコディアの來と久利生の子である未来とも違っていた。未来もずっと水中にいても平気ではありつつ、同時に長く地上にいるのも無理ってわけじゃなかったんだよな。だから未来と水帆は同じ、
<地球人の姿をしたクロコディア>
でありつつもそれぞれ異なる特徴を持っているということだ。でもまあ、この程度なら<個体差の範疇>とも言えるかもしれない。
さりとて、俺とシモーヌじゃ対処しきれないのを、<ライラ>と<オルト>にフォローしてもらうことで、水帆は健やかに育ってくれた。
ただまあ、その代わりと言っては何だが水帆は完全にライラとオルトを<自分の親>だと認識している。地球人の子供なら六歳ともなれば自分と親の姿があまりに違っていればそれについて疑問も抱き始める年頃かもしれないものの、水帆は今のところ気にする様子もない。
これは水帆が知能面ではやや幼い傾向にあるのも影響してるのかもな。もうすぐ六歳になる今の時点でおそらく地球人の三歳児くらいの印象なんだ。外見はほぼ地球人の十代半ばの少女のそれでありつつ知能の面ではそれだから、地球人社会では<そういう目>で見られるだろうな。
だが、ここでは別にそこまで気にするようなことじゃない。彼女が健やかに育ってくれてればそれでいい。それ以上は望まない。加えて三歳児くらいの知能があれば、概ね<集落の住人としての在り方>も理解できる。
『他者に危害を加えない』
という基本さえ承知しててくれれば十分なんだよ。<社会基盤>はロボットがいれば十分に成立する。<人間>は自分自身の人生をしっかりと生き切ってくれればそれでいい。『どんな親の下に生まれたか?』も『どんな能力を持って生まれたか?』も関係ない。そんなものは個人の価値を担保しない。<仕事>だって、今の地球人社会では<生きるためのするもの>じゃなくなってるしな。ここもそれは踏襲することになる。




