ルイーゼ編 救急ロボット
『ルイーゼと斗真の子供について俺達も全力でサポートする』
これについては紛れもない俺の本心だ。そのためにまずはホビットMk-Ⅱをさらに五機、応援に回す。それをどう使うかはアリニとドラニに任せるが、物理的に手は多い方がいいしな。
加えて、<車椅子ロボット>も改めて役に立ちそうだ。
だがそれより気懸りなのは、<ルイーゼ本人>だよな。そういうところに頓着がないのは火を見るより明らかなタイプなわけで。実際、簡易検査により妊娠がほぼ確実になっても彼女はそれまでと何ら変わらない様子だった。ひたすら自分の関心事にのみ意識を向けていて、自らの体すら気遣おうとしない。
だがそれでも、<メンテナンス>については素直に受けてくれた。
今日もそのためにコーネリアス号へと向かう。これまでも十分に彼女を気遣ってたが今回はさらに<彼女のおなかに宿った命>についても気遣うことになるわけで、一層体制を強化した。万が一の際の<救急キット>もこれまでより高機能なものを用意する。と言うか、<救急ロボット>だな。AEDはもちろん<ナノマシン注射>や<緊急手術機能>も備えたロボットだ。
かつて牙斬の襲撃の際にルコアが負傷し、緊急手術を行った久利生の<助手>をアリスシリーズの一機である<モニカ>が務めてくれたようにアリニにもその機能は備わってるんだが、サポート役がいるに越したことはないし。
ちなみに<救急ロボット>は、より高い精度が必要だったのでホビットMk-Ⅱではなくアリスシリーズの設計がベースになっている。アリスシリーズの増産は基本的に考えていなかったものの、まあこれは必要になるものだから、シオやレックスの承諾も得て改めてコーネリアス号の部材を使わせてもらった。ただし見た目はどちらかと言うとドーベルマンMPMに近いが。
こうして万全の体制を整えてルイーゼのメンテナンスに向かい、同時に詳細な診断も行う。で、結果としては、
「間違いなく妊娠してるね。しっかりと胎児が写ってる。妊娠三ヶ月だ」
医師役のシオが検査結果を見ながら改めて告げてきた。しかし当のルイーゼはその<胎児(と言ってもまだ豆粒みたいなものだが)が写った写真>に視線を向けながら、
「……」
露骨に嫌そうな表情を見せた。口には出さなくても『メンドクサイ』と顔が全力で言っている。することをしておいてそれというのも批判の的になりそうではありつつ、でも<親>なんてえてしてそんなものだ。誰もが心から望んで親になるわけじゃないさ。




