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ルイーゼ編 妊娠の兆候

そうして(ほむら)(さい)が認知症を患いながらも穏やかな毎日を過ごしてる中、


「ルイーゼ様に妊娠の兆候が見られます」


「……はい?」


アリニの<報告>に俺は唖然となっていた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、妊娠? ルイーゼが?」


まったく予測してなかった展開に理解が追い付かない。確かにルイーゼと斗真(とうま)は一緒に暮らしてたが、どっちもそんな気配は微塵も見せてなかったよな。そもそもそんなことに興味があるようにも感じ取れなかった。その二人がってことか?


「念のために確認するが、<斗真(とうま)との子>ってことだよな……?」


問い掛ける俺にアリニはまったく表情を崩さず、と言うか分かりやすく表情を作れるような構造にはなってないがそれでも淡々とした様子で、


「はい。それ以外の可能性はありません」


と、きっぱり応えてきた。まあ、アリニが備えてるセンサーであれば二人が自室で互いを求め合ってても察知できるだろう。しかしそれはプライバシーの中でも極めてセンシティブな部分だから<報告>はしなかったわけだ。コーネリアス号に残されていた部品を用いて組み上げられたAIを備え、コーネリアス号のAIとも連携して<思考>を行うアリニであればその程度の<配慮>は当たり前にできることだった。黎明期のAIには無理だったかもしれないが、三十八世紀頃のAIであってもこの程度は当たり前なんだよ。


にしても、なあ……


一応、ルイーゼも斗真(とうま)もそういう面もあったということか。分からんもんだな。


「でもまあきっと、あの二人のことだから『激しく求め合った』って感じじゃなくて『なんとなくそんな気分になったから』って感じだったんじゃないかな」


シモーヌが少し苦笑いを浮かべながらそう告げる。


俺としても、


「まあそうなんだろうな」


萌花(ほのか)と一緒に遊んでいる錬慈(れんじ)の姿を見ながら応えるしかできなかった。


この手の話を『生々しい』と感じる人間もいるだろうが、ここじゃむしろ当たり前の出来事でしかない。ルイーゼと斗真(とうま)がもう少し分かりやすい振る舞いをしてくれていたら俺だってこんなに驚かなかった。単に<生き物としての当たり前の営み>だし、驚くに値しない。


しないはずなんだがなあ。


でもまあそれでも、新しい命が来てくれるならそれ自体は喜ばしいことだ。


「分かった。ルイーゼと斗真(とうま)の子供について俺達も全力でサポートする。必要なものがあれば申し出てくれ」


「承知しました」


タブレットの中の<アリニのアバター>が恭しく頭を下げるのを、俺は何とも言えない気分で見つめていたのだった。



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