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深の出産(いよいよか)

(ほまれ)の警護のついでで(しん)の警護もお願いできるかな』


俺の言葉に、メイフェアは、


「分かりました。(ほまれ)様にお願いして警護に当たります」


そう快く引き受けてくれた。


ドーベルマンDK-a肆号機も派遣はしたものの、あんな怪しいのがすぐ近くをうろついてたら(しん)も出産どころじゃないだろうからな。あくまで向こうからは見えない位置で待機するだけだ。


破水が起こりいよいよ出産が始まる。


しかしその時、タブレット上に表示される、マイクロドローンが拾うバイタルサインを確認していたシモーヌが少し険しい顔をした。


「もしかすると、まずい状況かもしれません」


「…え?」


思わず声を上げる俺にシモーヌは、


「胎児の心音が一つ、確認できません」


(しん)の子は三人だというのが、バイタルサインを解析した結果だった。そのうちの一つが拾えないという。


「まさか…?」


俺は胃の辺りをギュッと締め付けられるような気がした。


「クソ…っ!」


そう声を上げても、ここからじゃどうすることもできない。


こういうこともあるのは分かっていたはずだ。生き物である以上は。でもこれまでは上手くいってたことで、どこか他人事のように思っていた気がする。それが今、突き付けられたんだ。


とうとう、俺のところにもそういう現実が訪れたってことを。


「まだ、上手く拾えてないだけという可能性もありますけど…」


シモーヌはそう言ってくれるが、正直、気休めに過ぎないというのは俺にも分かった。


ログを確認する限り、昨日の時点でもう心音が捉えられていなかった。だから治療も何もない。


実際、生まれた二人は元気よく「みぃみぃ」と泣いていたが、最後の一人は色からして明らかに普通じゃなかった。


もう、どうすることもできない。無駄と分かっていても治療したいという気持ちもあるが、恐らく、その子を助けようと近付けば、出産で気の立ってる(しん)がそれこそ何をするか分からない。最悪、他の子達にまで手を掛けたりすることだってありえる。


だから諦めるしかなかった。メイフェアにも手出ししないように、


「待機だ。余計なことはするな」


と釘を刺しておく。


「…はい……」


感情を再現されているメイフェアだったが、さすがに主人と仰ぐ(ほまれ)以外にはちゃんと自重してくれる。


しかし、俺に突き付けられた現実はそれだけじゃなかった。


元気な二人の体を舐めて綺麗にした後、動かない方の我が子を手に取り、(しん)がその子を見ていたと思うと、突然、くあっと口を開け、食らいついたんだ。そして、後産で出てきた胎盤と合わせて、きれいさっぱり食ってしまった。


死ねば、たとえ我が子だったものであっても、ただの<肉の塊>にしか過ぎない。出産で失ったエネルギーの補充の為にも必要なことだったのは、頭では分かってる。


「……」


でも俺は、締め付けられるような胸の痛みに、耐えるしかできなかったのだった。



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