ルイーゼ編 たたら製鉄
こうして斗真が<仕事場>に着くと、そこではすでにドラニが仕事の準備を始めていた。炉に火を入れて<ふいご>で空気を送り、温度を上げているんだ。そのふいごを動かしているのがドラニと三機のホビットMk-Ⅱ。そこに斗真が顔を出すと、ふいごを踏んでいたホビットMk-Ⅱの一機が離れて、代わりに斗真がドラニらと一緒にふいごを踏む。
彼はあくまで<鍛冶師>なのでここまでする必要はないんだが、最初の段階でこの仕事もしていたのもあってそうするのが当たり前だと思ってるらしい。
こうして炉の温度を上げてその中に入れられた砂鉄や細かい鉄鉱石が燃料でもある石炭と反応しつつ溶け、<銑鉄>となって流れ出る。それを今度はドラニと斗真が槌で叩いて鍛え<鋼>にしていくわけだな。
この時は<鉄のインゴット>にするだけだったが、必要とあらば<刀>や<ナイフ>や<包丁>といった刃物や、<鋤>や<鍬>といった農具を作ることもある。そのどれもが<匠の技>で鍛え上げられた一級品だ。それこそ地球人社会にいた<本職の鍛冶師>に勝るとも劣らない技術を彼は身に付けていた。非常に高い集中力と他に何か興味を示すものがないがゆえに結果として習得したスキルだと言えるか。
実際、地球人の鍛冶師でも斗真ほどの熱心さで技に臨んだ者はそう多くないだろう。地球人社会だと他にいろいろ<誘惑>も多いしな。
そんな彼の前に現れたのがルイーゼだ。その二人の出逢いは、地球人社会での一般的なそれとは随分と印象が異なるものだろう。と言うか、<男女の出逢い>と言うには実に奇妙で色気ないものだと思う。なにしろルイーゼはただただ彼が鍛えた鋼の美しさに魅了されていただけで、彼のことは最初は眼中にもなかったし。
ただ、斗真の方もそんな彼女を邪険にはしなかった。むしろ『関心がない』と言ってもいいくらいに好きにさせていただけだった。だからルイーゼの方も安心して傍にいられたのか、いつの間にか彼の傍にいるのが当たり前になっていったんだ。
で、今に至ると。
なんか特別に親しくしてる風でもなく、ただただ、
<同じ場所を寝床にしている別の獣>
のように一緒の家で暮らしてるんだよ。同じ寝室で寝てるんだよ。
生活パターンが嚙み合わないから実際に一緒にいるのはほんの数時間程度だが、それでいてお互いに相手を疎んでる様子もまったくない。『邪魔だ』と感じてる印象がまったくない。共に、
『そこにいるのが当たり前』
だと感じてるみたいなんだ。




