ルイーゼ編 仕事場
そうやってルイーゼには鉱物の研究に集中してもらってるんだが、同時に彼女は斗真のことも受け入れてるみたいなんだよな。
ただその『受け入れる』というのがいわゆる<普通>とは大きく違っている印象が確かにある。
まあこれは相手が斗真だからというのもあるだろう。斗真の方も俺達人間(地球人)に分かりやすい形でルイーゼと接してるわけじゃないし。
お互いの生活パターンがまったく噛み合わず、夜明けと共に目を覚まして<鍛冶としての仕事>を始める彼は、ルイーゼを起こさないように気配を忍ばせてそっと自宅の寝室から出てくる。
そしてダイニングでアリニが作った朝食を無言のまま食べ、それを終えると仕事着に着替えて家を出、歩いて数分のところにある<仕事場>へと向かう。
その彼の視線の先には、高さ三十メートルほどの二基の製鉄用高炉。それによって鉄鉱石から銑鉄を得、さらに各種の鋼材にまで加工する<製鉄所>が出来上がっていた。これまで必要に応じて更新し、現在ではそういう形になったんだ。
なお、今の時点ではそこまで需要がないのもあって昼間だけの稼働なので、彼が仕事場に向かう時点ではまだ静寂に包まれている状態ではある。もう少しすると稼働し始め、それなりの騒音を発しだす。
そんな製鉄所の一角に、斗真の仕事場がある。そこでは本当に昔ながらの手法で鉄が作られていた。<たたら製鉄>と言われるものだ。
<たたら製鉄>の施設はその構造上、割と短い期間で耐用年数を迎え、その都度更新していかなきゃいけないそうだ。なので現在、彼が仕事しているそれはすでに四代目とのこと。ちなみに五代目の<たたら>の建造がすぐ隣で始まっている。五代目が稼働を始めれば四代目だったそれは解体され、新たに六代目として建造が始まる。
単に鉄を得るだけなら高炉があればいいんだが、万が一、何らかの理由で高炉を稼働させられるだけの技術が失われたとしても<製鉄の技術>だけは残るようにと敢えて稼働させているんだ。
というのはまあ建前で、結局のところは、
『斗真の仕事を残しておきたいから』
ってのが本音だな。
これまた『個人の仕事を維持する』だけならとんでもない高コストではあるものの、少なくとも今の時点ではそれほどコストを考える必要がないからそれを行ってるわけだ。まあこれに比べれば<ルイーゼの特別扱い>も可愛いもんではある。
なお、高炉を備えた<製鉄所>の方はそれ自体がロボットであり、中で働いているのもドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱだ。




