ルイーゼ編 絶滅する寸前まで
<反出生主義者>なんかは、それこそ地球人社会ではお荷物扱いされていた存在の代表格だよな。
その<反出生主義者>らは、
『子供がいないからこそバリバリ働けるんだ』
とか言っていたのもいたが、いや、今でこそ老化抑制処置のおかげで二百年ほど現役で働けたりするが、それが実用化される以前はせいぜい四十年とかそこらだったわけだろう? 子供が生まれなければ次の働き手がいないわけで、子供を持つつもりのない人間が一時的にバリバリ働けたところでその先は<デッドエンド>だよな。
それを思い知らされたのが<人口爆縮>だ。地球全体で出生率が極端に下がり、猛烈な勢いで人口が減り、社会そのものを維持するのが困難になった現実がある。何しろ<次の働き手>も生まれなければ、<市場>そのものも急速に萎んでいくことで<バリバリ働くための仕事>もなくなっていったし。そうだ。子供が生まれなけりゃ<次の客>もいなくなるというのが現実だろ? 客がいなければ商売は成り立たない。成り立たない商売は消えていく。仕事も消えていく。
あれは本当に<地球人という種>が絶滅する寸前まで行ったんだそうだ。地球人同士が衝突しなくとも地球人という種が絶滅することも有り得るのをこれ以上ない形で思い知らされたわけだな。
当時も、
『子供なんか作らなくても自分達が働けば社会は成り立つ』
的にイキがってたのが多かったそうだが、物理的にそんなものは成立しないんだよ。
老化抑制処置が実用化され進歩し健康寿命が二百年を超えても次の世代が生まれなければ結局のところ<地球人という種>に先がないことには変わりがない。
『クローンで増やせばいいだろ』
とか言うかもしれないが、そうやってクローンとして生まれた人間を誰が育てるって? 『養育はメイトギアに任せる』という方法もあるかもしれないが、それは動物園で人工繁殖されている動物と何が違うんだろうか。
と、俺なんかは思ってしまうものの、だからと言って<反出生主義>を理由に排除しようとするのも違うと感じるんだよな。
生き物としては確かに歪でも、地球人という種そのものが野生を捨ててしまった以上は、『野生に反する』『自然に反する』なんて理由で虐げることは道理に合わないだろ。
ゆえに<反出生主義者>についてもしっかりとロボットがフォローしてくれる。老化抑制処置の効果が切れて年老いて誰も面倒を見てくれる人間がいなくても、ロボットは文句一つ言わずに身の回りのことを含めて力になってくれる。
それが何より強い安心感をもたらしてる。




