ルイーゼ編 そういうものの一つ
人間(地球人)というのは結局、自分達の力が及ばないところについては<科学技術>で補ってきたんだよ。<AIの助力>も要するに そういうものの一つでしかない。
これについて、
『何でもかんでも機械任せにするな!』
と声を荒げるのもいるが、そうやって声を荒げてる人間自身が、科学技術によってもたらされた服を着て靴を履いて携帯端末を使って自動車に乗ってAIで制御された家に住んでるんだから、本当に滑稽だよな。<人間という生き物>がいかに自分自身のことは見えてないかっていう何よりの証拠だ。まあ当人は『何でもかんでも機械任せにしてない』と思ってるんだろうけどな。
それでも、確かにすべてを機械に頼り切ってしまうのは具合が悪いだろう。その点は俺も同意する。だが現に人間同士での交渉ではそれこそ千年以上に亘って諍いを続けていた事例もあっただろう? 取り敢えず合意がなされたと思ったらすぐさま反故にして元の木阿弥になってきたりもした。
その辺りについては今もわだかまりそのものがすべて解消されたわけじゃないが、時折、局所的に衝突が起こったりもするが、AIによる調停がなかった昔に比べれば随分と小規模になったそうだ。それに伴い犠牲も減った。これもまた事実だよ。
とはいえ、完全には解消されていないし犠牲もゼロになったわけじゃないから、巻き込まれた当事者にとっては憤らずにはいられないんだろうというのも分からなくはない。事件に巻き込まれた当事者が加害者に対して激しい怒りや憎しみを向けずにいられないのも当然だと思う。そんな事態が回避できなかったことに対して諸々不信感を覚えてしまっても無理からぬことだな。
だがそれでも、そういうことに直接関係のない人間が<人間(地球人)という種が積み重ねてきた努力>そのものを否定するのも違うんじゃないか? とは思う。ましてや自分はしっかりAIの恩恵に預かっておきながらってのは。
地球の歴史では科学技術というのは文明の発展に伴って湧いて出てきたものだからそれに対して忌避感を抱く者もいるのは仕方ないのかもしれないが、ここ朋群では社会が成立した時点で光莉号やコーネリアス号のAIが存在して、最初からその前提で社会制度を作り上げていくことになるからな。
<いて当然のもの>
というわけだ。だったら最大限活かしていかなきゃな。
<生きる>ってのはそもそも綺麗事じゃないわけで、利用できるものは何でも利用していかなきゃ。




