ルイーゼ編 妥協点
ああそうだ。人間(地球人)ってのはなぜか、
『偏った方向にだけ想像力が働く』
という傾向がある生き物でもあったよな。
『自分はこんなに辛いのにどうしてこいつだけが助けてもらえるんだ?』
なんて考えるのも、
<自分は放っておかれているのに他人だけが助けてもらえているという想像>
からくるものだろうしな。
にも拘らず、<他人が味わってるつらさ>にいては不思議とロクに想像できないんだ。それが想像できれば『自分はこんなに辛いのにどうしてこいつだけが助けてもらえるんだ?』みたいなことを考えずに済むかもしれないんじゃないか?
まあルイーゼの場合、本人自身は『つらい』とまでは思ってないどころか『鉱物に囲まれていればそれだけで幸せ』という感じらしいけどな。だから<支援>じゃなくて<褒賞>なんだよ。
そういう意味じゃ、彼女に対して生じるであろう負の感情は、
『他人の才能を妬む』
的なニュアンスの<妬み>とも言えるのか。<つらい境遇にいる者が支援を受けられることに対しての妬み>とは若干意味合いが異なるのかもしれない。しかし、『他人の才能を妬む』のも浅ましさではそう違いもないのか。
なんにせよ治療カプセルでのメンテナンスを終えたルイーゼを、ホビットMk-Ⅱが車椅子代わりに運んでくれる。その様子を見ていて、
『ホビットMk-Ⅱを車椅子代わりに使えるようにするのもアリだな』
と思った。だからそのアイデアを早速光莉号のAIに具体的な形にしてもらう。
<車椅子型のホビットMk-Ⅱ>
と、
<従来のホビットMk-Ⅱを車椅子のように使うためのアダプタ>
の両方を。
<車椅子型のホビットMk-Ⅱ>の方が見た目にも安定感があって、目的を限定すれば使い勝手は良さそうだが、汎用性は明らかに下がりそうだった。対して従来のホビットMk-Ⅱに付けるアダプタの方は、上体を思いっきり後ろに反らせた状態で椅子を抱えている感じの姿で、計算上は問題ないんだろうがなんとなく不安になる見た目のバランスをしている。
今のAIは人間のそういう心理も考慮してくれるんだが、それを考慮した上で無理のない設計となるとこれが妥協点っていう感じだろうな。
まあ、複数機で担架を担ぐならともかく『単機で車椅子代わりに』というのは元々想定してなかったからなあ。そもそも『車椅子を使う』という発想がなかった。かなりの重症でも治療カプセルを使えば自力で歩くことができる程度にまでは少なくとも回復させられるわけで。
ルイーゼの例みたいなのはさすがに考えてなかったんだよ。




