ルイーゼ編 途轍もない恩恵
『自力で生きられない奴は勝手に死ね』
そんなことを本気で思っていたら、ルイーゼが俺達にもたらしてくれたものを得るのにあとどれくらいの時間が必要だったんだろうな。
彼女を生かし、そして彼女に情報とそれを活かす手段を提供したからこそ途轍もない恩恵がもたらされたんだ。
俺達は今、基本的な部分では二十一世紀前半頃の文明レベルの生活を確実に送ることができている。そこに四十世紀頃と六十世紀頃の技術がまだらに混じっている状態だな。
だが、それで何か不具合があるかといえば特にない。『そういうものだ』と思ってしまえばそこで暮らす人間にとってはそれが普通になってしまうということだろうな。
実際、俺達はこれと言ってそれを気にしたことがないわけで。そもそもの地球人社会を知らない光や灯はもとより、俺もシモーヌもあんまり違和感なく生活できてるんだよな。
これはおそらく、AIやロボット以外の<日用品>レベルの道具については二十一世紀前半には基本的な機能が完成して、それ以降は<改良>という以上に、
<付加価値の設定>
が中心になっていったからかもしれない。自動車や飛行機や船舶についても、本質的にまったく別物になってしまったわけじゃないし、銃火器だって安全装置がAIによっても制御されているというだけで、構造そのものは極端には変わってないんだ。だから宇宙船を使うことがなく、数は少なくともメイトギアがいて、日常のサポートを行ってくれるロボットがいてくれるなら、それほど不便もないんだよな。
タブレットなどの端末も、コーネリアス号に残されていたものがまだ十分に使えるし数も足りてるし。その辺りの通信端末についても<純朋群製>のものを試作しているが、あくまで性能差があるだけで、<普段使いに必要な機能>についてはまあだいたい再現できるんだ。
AI制御で使用者の意図を的確に酌んでくれて煩わしい操作が必要ないというところまでは難しいにしても、そもそもそういうのを知らない世代の人間なら気にしようもないだろ。
光や灯も、試作された<純朋群製通信端末>を試してもらったが、
「こういうものだと思えば別にそれほど不便じゃないかな」
「うん、そこまで問題じゃないよね」
と言ってくれている。
俺も、
『ちょっとめんどくさいな』
って感じるだけで、『使い物にならない』とまでは思わなかったし。気になるのはやっぱり今の時点で生産できる<リチウムイオンバッテリー>の貧弱さくらいのものか。
一日どころか数時間でバッテリーが上がってしまうのはどうも。




