メイフェア編 皆同じじゃないと駄目
そうだ。
『皆同じじゃないと駄目』
なんてのは、人間(地球人)が陥りやすい誤謬だ。人間も<生物>である限りは現実問題として『皆同じ』なんてのは有り得ない。そもそも、
『皆同じにならないように』
互いの遺伝子を掛け合わせて子孫を残すんだろう? 皆同じである必要があるならそれはおかしい。同じ種の中で個体ごとに異なる遺伝子を持っていちゃ駄目だろう。もうその時点で『同じにはなれない』ことが確定してるよな。
大前提として『同じじゃ駄目』なんだよ。
もちろん秩序を保つためにはある程度は似通った価値観に基づいて振る舞う必要はあるだろうさ。だがそれでも全て同じにはならないしなりようもない。異なる身体的特徴を持つ者がまったく同じ価値観を持つとか、想像できるか? 俺にはできない。
結局、『違っている』のが本来は当たり前だしそれこそが<生き物としての戦略>だな。
だから<命の始まりと終わり>も、それぞれ違っていて当然なんだ。たまたま俺の子供達は穏やかな最後を迎えることができた者が多かったが、それでも決して<同じ>というわけじゃない。それぞれ微妙に違っている。
だいたい、<工業製品>であり<同じ商品>であれば基本的にまったく同じ<品質>であることが求められるロボットでさえ、それぞれが辿る結末は違ってるのが普通だろう? だったら生き物が同じ結末を辿るのは逆に<異様>だよな。
そういうのもありつつ、
「お疲れ様、誉」
メイフェアのカメラ越しに俺が声を掛けると、
「お疲れ様」
誉の妹である光も穏やかな表情で口にした。さらには、
「お疲れさん」
タブレットの画面の中では、同じく誉の妹である灯も少々芝居がかった様子で砕けた感じの<敬礼>をしながら言ってくれた。
もちろんシモーヌもビアンカも久利生もルコアも彼を労ってくれる。<親戚>とはいえ直接は関わりもなかった陽と和もだ。実感はなくても俺達に倣った方がいいと感じてくれてるんだろうな。そしてそれを素直に表に出してくれている。<躾>なんてこんなものでいいと改めて思う。大事なのは<実感>だ。上辺だけの<フリ>じゃない。まあそれも<社交辞令>としては必要な時もあるのは事実だが。
でも、今の二人のそれは<社交辞令>ってわけでもないかな。
ちなみに未來や黎明や蒼穹は、さらに縁が薄いのもあってピンときてない様子ではあるものの、それはそれで構わない。ロクに顔も知らない相手にまでそんなことを感じていたら精神がもたないしな。
こうして俺達がそれぞれに誉の<命の終わり>と向き合っている中で、メイフェアは淡々と彼を弔う準備をしてくれていた。




