表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2546/2989

メイフェア編 ただ残念なだけ

そうだな。ボスの座を退いて群れに居場所がなくなった(ほまれ)が俺のところに帰ってきて彼に残された時間を一緒に過ごすことも実は期待していたりもした。事実上の<介護>ということになってしまうかもしれなかったが、別に問題じゃないし。


残念ながらそれは叶わなかったものの、不思議とそのこと自体はつらいというほどでもない。ただ残念なだけだ。


人間(地球人)の場合、老いが進むと幼児化してまるで子供のような振る舞いをする者がいる。実際に俺も、光莉(ひかり)が入院していた病院で、子供のように駄々をこねて看護師を困らせている高齢者を見たことがある。(ほまれ)がもしそうなっても相手をする覚悟もしていた。


なお、地球人社会だとそういう場合は、人間の看護師の代わりにメイトギアが主体になって接するんだそうだ。じゃないと看護師の方が病んでしまったりするしな。


その点、ロボットであるメイトギアは人間のように精神が擦り切れたりすることもない。そもそも擦り切れる精神そのものを持たないんだから当然だ。


ここで<心>を持たせてしまっていては人間の看護師の場合と同じ問題が生じてしまうだろうが、そもそも心や精神を持たないわけで、問題が生じようもない。これのおかげで現在の地球人社会は成立していると言っても過言じゃないだろう。


ここでもすでにそれは同じだな。もし(ほまれ)の介護をすることになってもエレクシアもいるしセシリアもいるしイレーネもいるしドーベルマンDK-aもいるし、必要であればホビットMk-Ⅱを派遣してもらうこともできる。何も心配は要らない。


(ひそか)の介護で改めて思い知ったが、<愛情>だけじゃ長く介護を続けることはできないさ。一時的にはそれで乗り切れたとしても、ずっとは無理だ。人間の精神はそこまで頑強じゃない。タフじゃない。早々に自分の弱さ脆さを思い知らされることになる。俺も思い知らされた。(ひそか)のことは間違いなく愛してたはずなのに、持ちこたえられない自分を自覚させられた。


(ほまれ)に対してもそうだったかもしれない。


もっとも、群れの中での彼は、<老い>こそ感じられたものの<介護>まで必要な印象はなかったよな。これはより野生に近い環境にいたことで<隠しておける程度の衰え>で済んでいたということなのかもしれない。


まあそれがどちらにせよ、(ほまれ)の最後は実に穏やかなものだった。(あらた)のそれとは比べるべくもないほどのな。


ただし、だからといって『(あらた)が不幸だった』とは言わない。言いたくない。それは(あらた)の尊厳を貶めることになると思う。


『皆同じじゃないと駄目』


ってわけでもない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ