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セシリアの働き(本当に頭が下がる)

俺とシモーヌが休んだ後も、セシリアは黙々と働いてくれた。


もはや修理する当てもないコーネリアス号の部材で、船体の強度や構造に支障の出ない部分(使われてない区画の間仕切りとか)を解体して、様々な物品を作る為の資材にする。それには当然、イレーネの義手や義足を作る為の資材も含まれる。


それを工作室に運び込み、コーネリアス号のAIが操るマニピュレーターに預けると、後は自分もメンテナンスを受け、それが終われば今度はいつものように居住区の掃除を始める。乗員達の個室を、今も淡々と、使っていた当時の状態を保ったまま、空気清浄機が働いているのでそれほど埃も積もらないが、僅かに積もった埃さえ残さない。


掃除が終われば次は新しい燃料電池を用意して、さらに太陽電池のメンテナンスと、本当に休むことなく働いてくれる。


まさに<奴隷>のようにという働きっぷりだが、彼女はそれに対して不平不満を漏らすでもない。人間は苦痛を感じるからこんな風に使われれば反感も覚えるものの、ロボットにはそれがないからな。


かつては<奴隷>などが負担していた過剰な労働をロボットが引き受けてくれたことで、人間社会がどうしても宿命的に抱えていた歪みや矛盾が解消されたというのもある。


まあそれでも、人間ってのは、人間同士の関係で思い悩んだりしてやっぱり生きることに苦痛を感じたりするってのからは逃れられてないのも現実ではある。


ロボットに頼らず<人間らしく>生きてる連中も、ロボットに任せてた部分を人間がすることになり、奴隷のように働かされる者が出てきて、そこに不満が溜まったりもしてるそうだ。


身の回りにAIが氾濫し、常時それに監視されているような状態に違和感や危惧を覚えて<人間らしさ>ってものを求めてしまったりしたらしいのに、皮肉なもんだな。


俺の場合は妹の病気という事情もあって、生きることに苦痛を覚えたりもした訳で、どっちに転んでもどう足掻いても、苦しみとか不安とかの<種類>が変わるだけで、全てにおいて完璧な世の中ってものは存在しないんだってことをつくづく思い知らされるよ。


今は間違いなく<幸せ>な俺だって、いろいろ大変だったり気苦労はあったりするからな。


AIやロボットはそういうものを一切感じない。『厳しい状況だ』という認識はできても、感情も持たず苦痛を感じる肉体も持たないから、<不満>が生じないそうだ。


俺の<光莉号>のAIも、コーネリアス号のAIも、セシリアも、もちろんイレーネもエレクシアもメイフェアも、本当によく働いてくれる。


そのおかげで俺達も生きてられるんだって頭が下がるよ。



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