メイフェア編 死の気配そのもの
なんて話は余談だから脇に置くとして、密林を出たところで背の低い草むらに倒れた竜生の遺体を収容するべくホビットMk-Ⅱらが駆け付けた。
『丁重に扱ってくれ』
という俺の命令に従って、ホビットMk-Ⅱは丁寧に最終的な<死亡確認>を行ってくれる。竜生の体に直接触れて心拍や呼吸や脳波の測定を実行するんだ。
その間に、<回転翼機>も現場に向かい、収容の準備を整える。
こうして実際に触れた上での詳細な測定により、心拍も呼吸も脳波も確認できないどころか血流も完全に止まっているのが確かめられて改めて死亡判定が。
<人間>の場合はそれでも蘇生の可能性が完全になくなったとするために二十四時間の猶予も設けているものの、竜生には適用されない。回転翼機が到着し着陸すると、そちらに乗っていたホビットMk-Ⅱらが担架を下ろして遺体を乗せ、収容。<空港>へと引き返した。
回転翼機の中で改めてストレッチャーに寝かされた竜生の遺体は、『透明である』という点や『手足が長い』という点を除けば、
<大型のトカゲの死体>
にしか見えないものだった。<人間>という印象はまったくない。
それでも竜生は確かに生きていた。<生きていた形跡>はしっかりとある。俗に<死臭>と呼ばれる臭いも検出されたしな。ロボットであるホビットMk-Ⅱらにとってはそれは苦になるものじゃないし単なる<情報の一つ>でしかないが、その場にいるわけじゃない俺達にとっても<画面上のデータ>でしかないが、同時に<死の気配>そのものとも言えるだろう。
一つの命がそこにあって、そして死んだんだ。
そこだけは、<亡くなった俺の家族>と何も変わらない。人間としては扱わないにしても、敬意は払いたいと素直に思う。この後、研究のためにレックスとシオの手で解剖することになるが、二人もちゃんと竜生の死を悼んでくれている。敬意を払ってくれている。それが<人間(地球人)という種の自己満足>にすぎないとしても、人間(地球人)として生きていく上では確かに必要なものでもあるしな。二人はちゃんとわきまえてくれているんだ。わきまえた上でここで生きていくのに必要な情報を得るために竜生の遺体を調べるわけだな。
空港へは三十分ほどで着き、ストレッチャーでそのままローバーに載せ替え、コーネリアス号へと向かった。レックスとシオは受け入れ態勢を万端整えて待つ。そこにローバーが到着。二人は神妙な面持ちで竜生を迎えてくれたんだ。




