表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2521/2989

メイフェア編 引き継がれることになる可能性

竜生(りゅうき)は相変わらず、<普通の獣>のように日々を過ごしながら、ほぼ一直線でどこかを目指して移動を続けていた。


だが、ここまでくるとおおよその進路も見えてくる。


「やっぱり竜生(りゅうき)の進路上にコーネリアス号があるね」


タブレット越しにレックスがそう告げてくるくらいには。


「そうだな……」


このことは以前から可能性の一つとして挙げられていた。しかしアカトキツユ村の件でもそうだったように『たまたま』という場合もある。ゆえに過度に反応しないように心掛けていたんだが、取り敢えず進路上にコーネリアス号があることだけはほぼ確定したわけだ。


しかし、


「コーネリアス号の乗員の意識を持ってることを窺わせるような様子もないんだよな……」


俺の言葉にレックスも、


「そうだね。私の印象としてもその通りだ。<野生の獣>として見ればかなり高い知能と理性を備えているのは見て取れるものの、<地球人としての振る舞い>とは違うと感じるよ」


とのことだった。


ここは、


「私も同感かな」


「私も」


「僕も同意見だ」


シモーヌもビアンカも久利生(くりう)も賛同する。だが、


「私は必ずしもその可能性は否定できないと感じるかな」


シオだけはそう口にした。シモーヌとは違う認識を示したんだ。


シモーヌとシオはどちらも<秋嶋(あきしま)シモーヌのコピー>であって、本来はまったく同じ人格を有しているはずだった。しかしシモーヌの方がかなり早く顕現しここでの人生経験を積んでいる分、すでに<別の人格>を獲得しているのが分かる。


対してシオはまだ顕現してからの期間が短い分だけ<オリジナルの秋嶋(あきしま)シモーヌ>の人格の影響が強く残っているということか。


だがそれも<当然のこと>として俺達は認識できている。人間は、と言うか<生き物>は、経験を積み重ねることによって自身を確立させていく。だからいくら基はコピーであっても別の経験を積み重ねれば<事実上の別人>になることも確かなんだ。本来なら<コピー>なんてものができるはずがないから本人だけが経験を積み重ねていくだけであって、それにより<連続性>も担保され、<本人>であることは揺るがない。


一方でコピーの方は本来の生物の在り方とは異なる手段で形で『生まれる』ことでオリジナルとの連続性は失われてしまう。


もしここでオリジナルがすでに死亡していたりすればそちらが有していた<権利>等のすべてがコピーに引き継がれることになる可能性もあるものの、同時にそれは<オリジナルが負っていた責任>についても引き継ぐことになるがゆえに実際に認められた事例はほとんどないそうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ